彼女に紹介されたお兄さんが同期だった場合の対処法【萩原研二】

１１月７日 ページ42

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「……ぅ、ぐ……っ」







＿＿＿＿＿＿体が、重たい。

暫く続いていた耳鳴りが止み、重たい瞼をなんとかこじ開ければ、そこには瓦礫の山が積み重なっていた。あちこちが痛む体を必死に動かし、自分の上に乗っている瓦礫を退かして、すぐにあの子の姿を探す。爆発する前、抱きしめた筈のあの子の姿を。


呼吸をするだけで胸が痛む。恐らく肋骨が折れているのだろう。左手も思うように動かない点から、多分もう使い物にならない。悶えるほどの痛みじゃないのは、アドレナリンの分泌が激しいからか。


頭から垂れてきた自分の血液が左目に染みる。瓦礫を退かす俺の手も、いつの間にか血塗れだ。
だけどやめるわけにはいかない。俺一人で下に降りるなんて、そんなことは、俺が許さない。







「安心しろって降谷ちゃん。俺、あの子置いて死ぬ気、微塵もねぇから！」







あの子を置いて死ぬ気がないように、あの子を置いて生きる気だって、俺にはない。

なぁ、だから早く、家に帰ろう。Aちゃん。下で陣平ちゃんが俺らのこと待ってるよ。
あぁ、でも、爆弾で吹っ飛んじゃったから、当分は自分の部屋に戻れないか。だけどその時は、俺の部屋にくれば良いし、なんならそのまま同棲でも良いじゃん。ほら、指輪だって、選びに行かなきゃいけないし。


……俺、君のために、とっておきのプロポーズのセリフ、考えたんだよ。






「は、ぁ……はぁ……ッ……く、っ」







肋骨の次は横腹が痛くなってきて、瓦礫の山に膝をつく。
そこが痛むのは、ちょっとよくねぇな。ワンチャン臓器逝ってるかも。


けれど膝をついたおかげで、俺はある物を見つけた。彼女が大切にしていた、青色の補聴器だ。
俺が居たあたりからそこまで離れてない。どこかの部屋の扉なのか、近くにあったひしゃげた板状の瓦礫を退かして、漸く見つけた。綺麗な寝顔を浮かべる、Aちゃんの姿を。







「Aちゃん……起きて、Aちゃん……」







軽く肩を叩いても、彼女は目覚める気配がない。恐らく意識を失っているのだろう。早く、彼女を抱えて下に降りなければ。

後頭部から血を流しているAちゃんの腕を首に回して、使い物にならない左手を無理やり使い物にし、小さくて脆い体を抱き上げる。あぁ本当は、こんな場面じゃなくて、もっと華やかな場面でお姫様抱っこしてあげたかったんだけどな。例えば、結婚式とか。



多分折れている右足を引きずりながら、瓦礫の山を乗り越える。
周囲の音が、遠い。







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