彼女に紹介されたお兄さんが同期だった場合の対処法【萩原研二】

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「明日、Aちゃんの家行くね」

「【うん、待ってる】」

「なんて？」

「待ってるってさ。うちの彼女可愛いでしょ。あげないよ」

「だから奪う気ねぇって」






手話で会話をする俺たちの横で、陣平ちゃんはさっぱり分からないというような表情を浮かべる。あんまり日常生活では使わないもんな。それでも意味を汲み取ろうとしてくれている彼はやはり優しい。

暫く高校の時のように三人で会話をしていたが、すぐに式終わりの教官に見つかり、どやされてしまった。鬼塚教官は本当に最初から最後まで厳しい人だった。てか今も厳しい。FDちゃんに名誉の傷負わせた時よりは可愛いもんじゃないっすか。







「なんで俺だけぇ！陣平ちゃん助けてぇえ！！」

「はぁ……ったく世話の焼けるやつだな。すまねぇ降谷、またどっかで……じゃ、なくて」

「？？？」







教官に首根っこを掴まれて引き摺られている俺でもそれは見えた。
普通に手をあげるだけで去ろうとした陣平ちゃんが、最後に右手で拳を作り、それからピースを作って、横にした所が。

あれは、手話で【またね】の動き。もしかして陣平ちゃん、Aちゃんの為にちょっと手話勉強してくれたのだろうか。え、待って、俺嬉しさでちょっと泣きそう。

Aちゃんも同じ気持ちなのか、俺たちの姿が見えなくなるまで、彼女はずっとニコニコと笑っていた。よっぽど陣平ちゃんの手話が嬉しかったのだろう。今回に関しては嫉妬とか出来ない。寧ろAちゃんを喜ばせてくれてありがとう陣平ちゃん。もう一生友達でいよう。







「……なんでお前が泣きそうになってんだよ」

「だってさぁあああ！！！」

「うるさいぞ萩原！！静かにせんか！！！」

「はいさーせん！！！！萩原黙ります！！！」







卒業式ということもあって始末書は無く、鬼塚教官には校舎を出た後もきちんと言われたことに従うようにと釘を刺された。俺は遠足前の小学生か何かでしょうか教官。
しかしこの説教も今日で最後。そう思うとなんだか無性に寂しくなって、去っていく教官の背中に敬礼を向ける。いつもは「何やってんだお前」と呆れる陣平ちゃんも、今日だけは一緒になって敬礼してくれた。







「陣平ちゃんは卒業したらさ、まず誰に会いに行く？」

「あぁ？んだよ急に」

「いやーやっぱ気になんじゃん？」

「別に。…………姉貴辺りじゃねぇの」






……だよな、そうだよな。だってお前は、警視総監を殴る以外にも、お姉さんを守りたくて警察目指したんだもんな。
多分お姉さんも、死ぬほど喜ぶと思うぜ。






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