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陣平ちゃんのお弁当でハードルが上がってしまったのか、Aちゃんはどこか恥じらうように持っていたスケッチブックを傍に置くと、恐る恐る俺たちに食べていたお弁当を見せてくれた。
料理の専門家を目指すお姉さんのお弁当に比べれば、やはり品数は少ない。
だけど偏りがちなおかずはきちんとバランスよく詰められているし、朝の少ない時間にこれだけのクオリティーのお弁当が作れたら、寧ろもっと誇るべきでは。俺なんて毎日コンビニのパンよ？美味いけども。
「俺からすれば、Aちゃんのお弁当も相当なクオリティーなんだけど」
「……、……」
俺の言葉に何かを返そうとしたのか、彼女の両手が胸の前で構えられて、すぐに解かれる。恐らく手話の分からない俺を気遣ってくれたのだろう。この子はそういう子だ。
そりゃ、毎度毎度言葉を返すのにスケッチブックを取り出してたら、手話も使いたくなるよな。
Aちゃんは優しいから嫌な顔一つせず文字で表してくれるけど、普通だったらお昼ご飯中くらい食べることに集中したいはず。中断しちゃって申し訳ない。
こんな時、俺に「手話でも良いよ」って言える度胸があれば良いのだが。生憎、現時点で分かる手話といえば【ありがとう】と【こんにちは】しかないもので。
あまりにも(俺が)無力すぎる。
自分の無力を嘆いている間に書き込みが終わったらしい。コンビニの冷たいパンを食べていると、隣からツンツンと肩を叩かれた。
「【全然そんなことないよ。作るとき、かなり怪我しちゃったから】」
モグモグと口を動かす陣平ちゃんとスケッチブックの文字を覗き込んで、自然と視線が彼女の手元に移る。
確かに改めて見ると、左手の人差し指だとか、右手の親指だとか、陶器のように白い指先にオレンジ色の絆創膏が巻かれていた。
周りからは高嶺の花として距離を置かれているAちゃんの、俺たちだけが知ってる不器用な一面。嬉しさ反面、あわよくば俺だけが良かったなんて醜い独占欲は奥の奥にしまい込み、何気なくその傷だらけな左手に触れてみた。
「俺はこの傷も含めて最高なお弁当だと思うんだけどな」
「？？？」
「おいハギ。昼食中に口説くんじゃねぇ」
「伝わってないからノーカンですぅ。てか口説いてねぇし」
「そういうこと言ってると、うちの姉さんに嫌われるぜ？」と言えば、逆隣から理不尽に足を踏まれた。ローファーの踵はずるい反則。レッドカード、レッドカード。
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ひなみ - 読み終わった後、偶然、コナンのＥＤにもなった「ジューンブライド〜あなたしか見えない〜」を聴いたんですが、この曲の歌詞が妙にこの作品に合っている気がして、またこの作品を思い出して泣いてしまいました。心に残る素敵な作品をありがとうございました。 (2022年10月16日 17時) (
レス) id: ba9ab70415 (このIDを非表示/違反報告)
ひなみ - 読み終わった今も涙が止まりません…。まず二人が助からないと分かったところで大号泣、夢主が既に亡くなっていたと分かったところで大号泣、最後の写真で大号泣…。ずっとギャグだったから、こんな結末全く予測していませんでした…。 (2022年10月16日 15時) (レス) @page49 id: ba9ab70415 (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - 最後のイラストで涙が止まらなくなりました😭 (2022年6月23日 22時) (レス) id: 1cfa02e0c5 (このIDを非表示/違反報告)
ルリ(プロフ) - まさかの結末で涙が止まらない、、、 (2022年6月14日 19時) (レス) @page48 id: 2eb7e133f7 (このIDを非表示/違反報告)
milk - なにこれ、悲し過ぎない！もうtｼｬﾂの袖がびしょ濡れになりました (2022年5月26日 0時) (レス) id: b9832e8e21 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：無糖
| 作成日時：2021年7月25日 15時
