彼女に紹介されたお兄さんが同期だった場合の対処法【萩原研二】

残された親友の独白 ページ44

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＿＿＿＿＿＿萩原の胸ぐらを掴もうとするゼロを背後から抑え、目を伏せる。今の俺には、絶望の淵に立たされているこいつに、こんなことしかしてやれなかった。
死者を殴ったところでお前の絶望はどうにもならないと、初めてゼロが見せた涙を前にして、止めてやることしか出来なかった。






……こいつにとっては、なにもかもやるせない事ばかりだろう。



自分の妹の葬儀は、兄以外の家族も居ない、親戚も居ない、唯一俺や諸伏のような友人が参加しただけの、質素なもの。気を遣った班長やその彼女も出席してくれたが、彼にとっては顔も合わせたことのない相手だ。どちら側からしても複雑な心境だったに違いない。

おまけに萩原の母親には「貴方の妹さんが逃げ遅れたせいで」と責められる始末。これには萩原の姉達が母親を咎めたものの、既に、ゼロの心は深くまで抉り取られていた。



あんなにも自分に非がなければ謝らなかったゼロが、「すみませんでした」と頭を下げたのだから。







「なんであん時、お前が謝ったんだよ」







散々萩原の遺体に向かって叫んだからなのか、すっかり脱力しきったゼロの体を支え、葬儀場を出る。近くの石段に座らせれば、奴はすぐに頭を抱えてうずくまった。

俺は別に、お前に謝罪をさせる為に、萩原の最期を語ったわけではない。ただ、お前があいつに妹を託した選択は間違いではなかったのだと、そう伝えたかっただけだ。萩原はお前が認めただけの男だったと、ただ、それだけを。







「お前が謝ったら、降谷はどうなるんだよ。あいつは……なんも悪くないだろ」








降谷は元々、耳が聞こえないというハンデを背負っていたのだ。補聴器を付けていたって、踏み切りや耳元で叫ばれて漸く聞こえるほどの聴力しかない。機動隊の避難命令が聞こえなくともなんら不思議じゃない。

責任があるとすれば、俺たち機動隊だ。いくら部屋数が多いとは言え、中に人が居ないこともしっかりと確認すべきだった。爆弾の設置場所から近い階は、特に念入りに確認すべきだった。


萩原が降谷の存在に気づかなければ、あいつらの死体は、葬儀場にすら無かったかもしれない。……逃げ遅れた機動隊員と同じように。






「…………分かって、しまったんだ。萩原の母親が、僕を責めたくなる気持ちが……誰も悪くなくたって、責めたくなるんだ……そうすれば、この行き場のない喪失感を、埋められる気がして…………あぁ、でもそうだな。Aを庇える人間は、僕しか居なかったのに。最低なことを、してしまった」

「いや、そこまでは」







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