忘れられない日付は ページ38
．
「は？！おま、卒業して早々プロポーズしたのか？！？」
「そうですけどなにか」
「……なんかお前今日テンション低くね？」
「よくぞ気づいてくれた陣平ちゃん。今日はその指輪を一緒に見に行こうって約束してた矢先の出動要請だよ。はー！これだからブラック企業は！」
「そらご愁傷様なこって。おら、さっさと行くぞ」
「うあーん！爆弾とデートなんてしたくねぇよー！」
＿＿＿＿＿＿11月7日、快晴。
本来ならばこの日、俺はAちゃんとキャッキャウフフしながら宝石ショップに赴いていて、今頃はお互いの指輪を選んでいる所だった。
なのにウチの警察庁は、なぜか壊滅的に空気を読まない。一体いつ日本人としての誇りを忘れたんだ。ここは良い感じの雰囲気を察して控える所だろう。
だがいくら喚いたところで爆弾魔が大人しく「じゃあ爆弾撤去しますわ」なんて言うわけもなく。やだやだと喚いている間にも、陣平ちゃんは俺の首根っこを掴んで出動車両のところまで歩いていった。
重装備な上に中身は鍛えた男を片腕で引き摺るとか、俺の親友腕力お化けか。やっぱ降谷ちゃんに似たよね？
「俺はもう一個の方解除しに行く。お前も解除できたらすぐ報告しろよ」
「りょーかい。まぁお互いゆるゆると頑張りましょうや」
別れる前、分厚い手袋をはめた右手でハイタッチを交わし、バタンと扉をしめる。その際、脇に機動隊の盾を抱えて走っていく後ろ姿は、いつの間にか俺よりもたくましかった。背は俺より小さいのにな。
俺がこれから担当する爆弾は、とあるマンションに設置されたものらしい。隊長の説明を聞きながらしっかりと必要なものを確認し、普段はサボりがちな防護服も身につける。
……今日指輪を選びにいけなかった、彼女へのせめてもの償いだ。
「爆弾はこの建物の中か」
「はい、間違いありません！」
前方から隊長と同期の会話が聞こえてくる。その声に、外の状況が窺える数少ないフロントガラスから建物を見上げた俺は、さーっと血の気が引いていく感覚を覚えた。
＿＿＿＿＿＿見覚えしかない建物が、そこに聳え立っていたから。
「A、ちゃん……」
休日は必ずと言っていいほど泊まる、彼女の……Aちゃんの住む、マンション。
どうして……よりにもよって、どうしてここなんだ。どうして、今日なんだよ。俺とのデートの予定さえなければ、あの子は今日大学で、今頃はマンションの外に居てくれたのに。
当日になってドタキャンしてしまった俺のせいで、あの子は今も、あの中に居る。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 874人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うな - 陣平ちゃんが最後らへんで言っていた、2人の結婚式は呼ぶって言ってたのに的な話のとこで止まりかけてた涙が一気に溢れてきました。萩も大怪我なのに最後まで彼女ちゃんを守ろうとしている所がもう…😭最後の写真もすごく素敵だし、大泣しました。大好きです。 (5月6日 15時) (
レス) @page49 id: c7c459b30e (このIDを非表示/違反報告)
ひなみ - 読み終わった後、偶然、コナンのＥＤにもなった「ジューンブライド〜あなたしか見えない〜」を聴いたんですが、この曲の歌詞が妙にこの作品に合っている気がして、またこの作品を思い出して泣いてしまいました。心に残る素敵な作品をありがとうございました。 (2022年10月16日 17時) (レス) id: ba9ab70415 (このIDを非表示/違反報告)
ひなみ - 読み終わった今も涙が止まりません…。まず二人が助からないと分かったところで大号泣、夢主が既に亡くなっていたと分かったところで大号泣、最後の写真で大号泣…。ずっとギャグだったから、こんな結末全く予測していませんでした…。 (2022年10月16日 15時) (レス) @page49 id: ba9ab70415 (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - 最後のイラストで涙が止まらなくなりました😭 (2022年6月23日 22時) (レス) id: 1cfa02e0c5 (このIDを非表示/違反報告)
ルリ(プロフ) - まさかの結末で涙が止まらない、、、 (2022年6月14日 19時) (レス) @page48 id: 2eb7e133f7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：無糖
| 作成日時：2021年7月25日 15時
