encore ~ (ページ1)

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1st story ページ1

天地がひっくり返ったのかと思った。
もしくは明日、地球が終わる。

「京本、飯行こう。」

一度だけ聞いたことのあるセリフ。
確かその時は、樹、だった。
北斗は自分からあんまりメンバーを誘わない。

「えぇっと…、」

俺は、こいつの表情が苦手だ。
なにを考えているのかわからない。感情が読み取れない不思議な表情。
あまりの衝撃に言葉を濁していれば

「行きたくないなら良いけど。」
と冷たく言い放たれてしまう。

「行きたくない、って訳じゃ…ない、けど。」

「…そっ、じゃあ。決まり。」

考えてみれば今日は朝からおかしいと思ったんだ。
いや、今日に始まった事じゃなくて最近か。
少し前の動画で、あいつは俺との事を
「互いに干渉し合わない」なんて表現していた。
それには少し語弊があると思う。
俺のスタンスは、来るもの拒まず去る者追わず、だ。
だから、北斗を遠ざけようと意識した事は一度もないし、どちらかと言えばあっちが俺を遠ざけているだけである。

それなのにどうだ。最近の態度と言えば。
今まで2人きりになる事は絶対になかった。
あいつはすぐ楽屋を出て行ってたし、そういうシチュエーションは皆無だったのに。

なぜ自ら突然2人きりになろうと思ったのか。

「ちょ、まって。北斗。」

声をかけて後悔する。
俺に背を向けて歩いていた北斗が、くるっ、と俺の方を向いた。

「それって…2人？」

聞いちゃいけない事だっただろうか。
こんな風に誘われて、逆に2人じゃないということがあろうか。
いや、北斗ならあり得るかもしれない。なんて思ってしまったのだ。

「…そうだけど。」

案の定北斗は怪訝そうな顔を浮かべてまた楽屋を出て行ってしまった。

なにが起きているのだろう。
真夏に雪が降るくらいの衝撃だ。
いや、そんな事は絶対にありえないのだけど、その絶対にありえないことが起きてしまっているのだ。
時空が歪んだ？ここは夢？
考えれば考えるほどわからなくなってしまって、ほっぺを思い切りつねれば楽屋に戻って来た樹にギョッとされてしまった。

夢じゃない。これは夢ではない。

これから撮影だというのに、心臓はどくどくと激しく脈打っていた。