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「とりあえず…話聞いてもええか?」

おみちゃんが消えたドアをうっとりと見つめる隆二の周りにはやっぱりハートマークが飛んでいた…。

「隆二!」

少し強めに言うと隆二は身体をビクッとさせて俺を見た。なんやその怯えた目は…

「あ、ゴメンな。怒ってるわけやないで…」

慌ててそう言うとホッとしたように少し笑う。
そして隆二が口を開く…

「あの…けんじろく…健二郎さん…、私の話、信じてくれますか??」

病院のベッドの上、布団を肩に被ったまま喋りだした隆二が足をぺたりと下につけたおねぇ座りだった事に今更気付いて「なんかキモイなー」なんて考えてた俺の耳に入ってきた隆二の話は…なんだかすごく、とても…どう考えたって、
信じられないような話だった。

「私、昨日死んだはずなんですけど、朝起きたら隆二さんになってました。」









「えと、うん…。それはつまらんわ隆ちゃん。」

30秒ほど固まった俺がやっと絞り出したツッコミ(こっちの方が全然つまらんやん!何してんのよ俺!)に隆二の目は途端にうるうるとしてそんでもって大粒の涙がポロポロ零れた。

「やっぱりけんじろじゃダメだぁ…ほんっと頭硬いしツッコミ面白くないし…」

えーーん!と泣きながらベッドに突っ伏してしまった隆二の背中を慌ててさする。
…てかこいつ、泣きながらすげー失礼なこと言ってなかったか?あ?
泣きながら「直己さんとチェンジー!」などと叫んでいる隆二、いい加減キレるで健ちゃんも。
隆二の頭をぺちりと叩く。

「隆二…いい加減にせえ。」

俺の真剣な声色に気付いたのか隆二が顔を上げる。その目は涙で濡れていたが俺の目をじっと見つめ返す。そして隆二もまた真剣な声色で言った。

「日向A、24歳、千葉県出身。○×電気勤務、総務部所属、

昨日静岡の白浜海岸で海水浴中に溺れて死にました。」

調べてください。事故のことはニュースとかになってるかも知れません。

隆二が俺の目を見て真っ直ぐ真剣な眼差しでそう言い放った。
その真剣な顔はとても切なく悲しそうだった。



スマホを取り出しニュースを検索する。
画面をスクロールして見落としそうな小さな記事をやっと見つけた。

“静岡県白浜[海水浴事故]24歳女性会社員 溺れた子供を助け 死亡”

「あ、私が助けた男の子…大丈夫でしたか??」

ニュースによれば男の子は助かってそれを伝えた隆二が「良かったぁ」と嬉しそうに言ったのを見て…

これはほんまもんの話だと…
信じるしかない…

作者より→←004



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作者名:kyle | 作成日時:2018年3月11日 11時

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