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柊が産まれてほどなく、我が家は私の旧姓を名乗ることになった。
当然、企画されていた柊の誕生日パーティーは、招待状を出すまでもなく中止になり…。
そして渉さんが接近禁止命令を出そうとしていることを知ったお義母様は、酷いショックを受けて、１年近く寝たきり状態になっていたらしい。
若葉を通じて、
「今の大奥様は、まるで人が変わったようになっておられるようです
すっかり勢いがなくなられたご様子で、口数もめっきり減られているとか」
と、お義母様の情報は聞いていたけれど。
正直、信じられずにいた。
あのお義母様だよ？
きっといつものようにすぐに復活して、私達に攻撃を仕掛けてくるに違いないと思ってた。
だけど、柊の１歳の誕生日の１週間前、健診で訪れた病院で偶然お義母様と出くわしてしまった。
秘書の方に押された車椅子に座っているお義母様は、一気に老け込んで見えた。
焦点のあまり合っていない目で、ぼんやりとベビーカーを押す私を眺めていたけれど、ベビーカーの中に視線を移した途端、
「小さい頃の渉に生き写し…」
そう言っては、急にぽろぽろと涙を零し始めた。
本当にこの人は、あのお義母様なんだろうか。
ベビーカーを車椅子に近付けてみたら、お義母様は小さな柊の手を取って、薄く微笑んだ。
その微笑は、まるで慈愛に満ちた母親の微笑みそのもので。
それが、とても信じられなかった。
お義母様は渉さんの子育ても放棄していたと聞いてたのに、渉さんの幼少期の姿を知ってるとは思えなくて。
だけどお義母様は秘書に持たせていたバッグの中から、皺のついた写真を一枚、私に手渡してきた。
それはちょうど一歳くらいの渉さんが、お手伝いさんに抱かれて写っている写真で。
お義母様が涙を流す理由が、この写真でようやくわかった。
だってその写真の子どもは、ベビーカーの中にいる柊そのものだったから。
そうか…、お義母様は育児放棄をしたのかもしれないけど、こんな風に彼の写真を見ながら成長を確認していたんだろうか。
そしてその写真をお義母様はずっと、こうしてシワシワになるまで鞄に入れて持ち歩いていたんだろう。
なんだか、この親子はよく似てる。
本当は愛したくて愛されたいのに、やり方がよくわからなくて不器用で。
結局、やり方を間違ってしまうところも、本当によく似ている。
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まいまい(プロフ) - 読了しました…感動です。最後まで魅力的なお話でした。書いていただいてありがとうございました！！また他の作品も読んでみたいです。 (2021年5月6日 23時) (
レス) id: d8ffbdef31 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - かばえさん» 今まで読んでいただいてありがとうございました。玉担さんだったんですね！また何かしら書きますので、その時はよろしくお願いします。 (2021年3月8日 16時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - かみりーなさん» 読んでいただいてありがとうございました。かなり重めな感じに仕上がってましたよねｗまた何か書いていきますので、その時はよろしくお願いします。 (2021年3月8日 16時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
かばえ(プロフ) - マーマレードものすごく素敵なお話でした。ドキドキハラハラキュンと読んでいて楽しかったです。マーマレード完結で寂しくなるけど次回作も楽しみにしています。玉担ですがマーマレードの渉さん大好きでした。 (2021年3月7日 10時) (レス) id: ee5b6d6ece (このIDを非表示/違反報告)
かみりーな(プロフ) - 完結おめでとうございます。そして素敵な物語をありがとうございます。マーマレード渉さんの重ーい愛が新鮮で大好きでした！他の作品も楽しみにしています！ (2021年3月5日 22時) (レス) id: 1856802e71 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りたわかめ
| 作成日時：2021年1月2日 23時
