209 ページ9
小声でそっと囁いてみる。
「もしかして若葉、近くにお義母様がいる?
もしいるなら、さっきと同じことをもう一度言ってくれる?」
そう告げた途端に若葉は、さっきと同じ文言を繰り返す。
彼は私の手からそっとスマホを取り上げると、
「ごめん、若葉
もう切るわ」
そう言い残して、本当に電話を切ってしまった。
そして丁寧に電源まで落としてから、私の手のひらに戻してくる。
「いいの?切っちゃって」
「話すことなんか何もないだろ」
そのまま、またベッドに仰向けに寝転がった彼は、
「もう寝よう」
そう言って、部屋の明かりを消してしまった。
時刻はもう深夜1時を越えていたけど、私達は全然眠くなんかなかった。
「何でお義母様が若葉の傍にいたんだろ」
「こっちと時差、何時間あるんだっけ」
「今サマータイムだから、+6時間?
日本は朝の7時だから…」
「若葉はいつも7時に出勤してくるから、部屋の前で待ち伏せでもしてたんだろ」
溜息混じりにそう吐き出しては、彼は怠そうに背中から抱き寄せてくる。
「家の中に入られたりしてないよね?」
「別に見られて困るものはないから
あったとしても、若葉がうまく隠しておいてくれるだろうし」
「今度はどんな家に住む?」
何の気なしに聞いてみた。
だって、あの部屋にはもう住めないだろうから。
「こんな感じの部屋?」
「この部屋?」
「適度に狭くて、すぐに何でも手が届くような」
うん、それは私も賛成。
あの部屋は無駄に広すぎたよね。
「でもキッチンは広い方がいいかも
いろいろ収納したいし」
「ベッドは?
キングサイズのすごいのじゃなくていいの?」
「セミダブルくらいでいいんじゃない?
あのベッドで寝てても、結局セミダブルくらいの範囲しか使ってないと思うし」
そうだね。
私達はいつもそんな風に、大きなベッドの端っこで眠ってた。
しかも清い関係のままで。
でもあのベッドでまた眠ることがあったら、私達は絶対に清いままでなんて居られないけど。
そして…、忘れてたよね。
今夜がこの部屋で過ごす最後の夜だってことに。
背中から抱き寄せてた腕は、急に服の中に入っていく。
そしてキスになだれ込む寸前、動きを止めた彼は、
「…結婚してよかった
しかも、その相手がAでよかった」
そう言って、一瞬だけ泣きそうな目をした後、唇を落としてきた。
私もそう思うよ。
彼と出会えたんなら、政略結婚も悪いもんじゃなかったって。
1354人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まいまい(プロフ) - 渉さん、無事で良かった〜2人には幸せでいて欲しいので、この展開は嬉しいです。子供出来てたらなお嬉しいなぁ…それにしても渉さん、どんどん成長しますね! (2021年5月6日 14時) (レス) id: d8ffbdef31 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - Haruさん» まあまあ、焦るな焦るな。まだ妊娠とはわからんで。生理の有無を聞いただけですがな♪ (2019年9月29日 22時) (レス) id: ba720923d0 (このIDを非表示/違反報告)
Haru(プロフ) - えぇぇぇええーーー??ここへ来ての妊娠?!穏やかにニマニマ読んでたのに一気にそわそわしだしたやないかっ。 (2019年9月29日 22時) (レス) id: 476aea9d9a (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - ひとみKandHさん» 本当に!!ミラコでラブラブできるのかどうか(/ω\*)横尾さんとディズニーシーは雰囲気的に合うと思うんですよね♪ (2019年9月19日 18時) (レス) id: ba720923d0 (このIDを非表示/違反報告)
ひとみKandH(プロフ) - こんにちは!横尾さんとインパなんて(^^)待ち時間も絶対楽しいですよね!ミラコでのらぶらぶシーンも楽しみにしています! (2019年9月7日 11時) (レス) id: d7aec2014e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:りたわかめ | 作成日時:2019年7月31日 0時