唇とマーマレード 5

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「まあ···、そんなに簡単に出来るわけじゃないし···
いいよ、神様からの授かりものってことで」

ギリシャの時だって、あんなに回数こなしてたのに出来なかったし。

でもそれは、安全日だったってことなのかな。

私的には、まだまだ２人でいたいんだけど、もし子どもが出来たなら、それはきちんと受け入れるよ。

だって、彼の幸せそうな顔がもっと見たいから。









「最初は女の子がいいと思う」

そんなことを言い出した彼は、さっきから飲むペースが早い。

「何で女の子？」

「育てやすいって言うじゃん」

「そうなの？」

「女の子だったら、Aに似た子がいい
俺に似た仏頂面の女の子だったら、誰にも愛されないから」

自分のこと、よくわかってるね。

でもきっと、あなたは生まれつき仏頂面だったわけじゃない。

それは育った環境のせいだから。

だって最近の彼は、よく笑うようになった。

それが私にはうれしくてたまんないんだ。









今夜の彼はかなり機嫌がいいようだ。

だってさっきから彼は饒舌で、とうとう近い将来の夢みたいなものまで語り始めた。

「子どもは２人がいい
女の子と男の子１人ずつ」

「そんなにうまくいく？
女の子が続けて産まれたら、もう１人産んじゃうの？」

「別に姉妹でもいいよ」

「きっと渉さんは溺愛しちゃうんだろうな、娘ができたら」

なのに、その言葉を聞いて、彼は何故か物憂げな表情になってしまう。

「でもそんな日が来たら、俺は悩むと思う
娘をどう愛したらいいのか、わからなくて」

「愛し方がわからないってこと？」

「可愛がりすぎて、叱れなくなったらどうしようとか思うし
実際、今もAを溺愛しすぎて、何されても腹が立たないのに」

···それって、喜んでいいやつ？

何されてもって、私そんなに彼にひどいことしたっけ？

「渉さんが子どもを叱れないなら、私が叱る担当になるよ
その分、私は子どもには嫌われちゃうかもしれないけど」









「でも大丈夫
もし子どもができたら、うんざりするほど溺愛したらいいよ
その子に愛されるってことを、渉さんが教えてあげて」

幼少時の彼が親からして欲しかったことを、全部その子で叶えてしまえばいい。

いつか出会えるであろう私達の子どもは、きっと幸せな幼少期を送れるんだろうな。

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