唇とマーマレード 5

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「何でいきなりそういうこと聞くわけ！？」

「ハネムーンだし、避妊しなくていいのかなって」

だから、真顔でそんな現実的なこと、言わないでほしい。

「私はまだ子どもは欲しくない」

「俺は欲しいと思ってる」

そう言い返してきた後に、

「で、最近生理が来たのはいつ？」

改めて聞いてくる彼は、なかなか本気みたいだ。









「…先週」

ギリシャから帰って来てしばらくして、すぐ生理が来たから。

「そっか…、じゃあ、終わったのはいつ？」

だから…、何でそんなプライベートなことを聞いてくるかな。

そんなの言いたくないんだけど。

「終わった日から一週間後が、排卵日らしいよ」

「…そんなの、何で知ってんの？」

「スマホで調べた」

「いつ？」

「ついさっき」









呆れた…。

何かスマホに見入ってるとは思ってたけど、そんなことを探してたんだ？

「言いたくないならいいけど
でもちょうど妊娠しやすい時期なんじゃない？」

だから真顔で言わないでって。

まあらニヤけながら言われるよりはマシだけど。

「そんなに子どもが欲しい？」

そう聞いてあげれば、

「Aの子どもが欲しい」

とか、よく意味のわからない返答が返ってきた。

「Aによく似た女の子を育ててみたい」

普通なら喜んじゃう言葉なんだと思う。

だけど私は素直に喜べなかった。

何も小さい私を可愛がらなくても、目の前にいる私を可愛がればいいじゃん！

だけど、

「Aと、ちゃんと家族になりたい」

心なしか寂しそうにそんなことを言われてしまうから、私はもう口答えも出来なくなった。









「Aによく似た子を２人で育てたい
きっと楽しいと思う」

その割には全然楽しそうな顔してないじゃん。

どこか寂しげな目をしてる彼は、本当に私との強い繋がりが欲しいんだろう。

子どもが産まれれば、私達の関係はもっと強固なものになるって考えてんのかな。

「もちろん、産んでくれるのはAだから
Aの意見は尊重するけど」

「私が嫌だって言ったら？」

「とことん話し合う」

でそれってさ、私を論破してねじ伏せようとしてない？

「逆に、Aが子供はまだ欲しくないっていう理由は何？」

「それは···、まだ２人での時間を楽しみたいし」

そう言っただけで彼は、今まで見たこともないくらいに幸せそうに微笑むから。

きっと今の彼は、乾いた土が水を吸い込むように、愛を欲してるんだろう。

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