唇とマーマレード 2

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「瑠璃子さんが、うちの親に泣きついたらしい
全部バレてたわ」

「怒ってた？」

「多分、俺が瑠璃子さんと一緒にいないことに怒ってた」

なるほど。

お義母様からしてみたら、私が身を引いて瑠璃子さんに彼を譲ったことまでは目論見通りだったはすで。

それを彼が拒否して帰国したのは、想定外だったんだろう。

お義母様は、私に怒ってたけど、

多分、今私達が一緒にいるってことに怒ってたんだろうな。









「毒親って言葉、知ってる？」

唐突にそう訊ねてきた彼は、憂鬱そうにひとつ溜息をついた。

「うちの母親、まさにそれだから」

…少しだけ、そうかなって思ってた。

もうとっくに成人してる息子の結婚に、やたらと口出ししてくるのが気になってたから。

「俺の人生の全てを支配したい人だから、あの人は
俺の結婚だって、自分の操作できる人と結婚させて、遠隔的に俺を支配したいだけ」

その操作できる人が、瑠璃子さんだったってことか。

「大学の時に１人暮らしを始めてから、ようやく母親から解放されて、
実は…、つい最近まで、母親とは距離を置いてた」









「さっきも、今すぐ実家に来いって言われたけど断った
どうせこの雪では行けないし」

そうだった！雪だよ。

窓の向こうでは、さっきよりも強く吹雪いていて、もう簡単には帰れないってこともわかった。

「本気？
ここに連泊するとか」

「もう母親にバレたんだから、家に帰ってもいいけど
この雪じゃ帰れないし」

「いいの？
私と2人でこの部屋にいて」

そう聞いたら、

「どういう意味？」

って、彼は不思議そうな顔で私を見てくる。

「もう一部屋取った方がいいんじゃないの？」

「何で？」

何でって…。

今まで偽装結婚だった私達がいきなり、ホテルに数日２人きりとか。

お互いストレス溜まるでしょ。

恋愛感情があるならまだしも。









「試してみたいから
Aと同じ空間にいて、ストレスが溜まるかどうか」

「…もう、だいぶ溜まってんじゃない？」

「想像してたより平気
昨日も久しぶりに誰かと一緒に寝たのに、よく眠れたから」

「それは疲れてたからかもよ。」

「かもしれない
だから、今夜またAと寝てみて、同じように熟睡できるのか試してみようと思う」

…って、真面目なトーンで、そんなこと言わないで欲しい。

それに、さっきから自分のコンディションのことばっかで、私がどう思ってるかとか全然気にしてないよね？

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