唇とマーマレード 2

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「ねえ、それって私のこと好きだってこと？」

そう聞きたくなるよね？

そんなこと言われたら。

なのに彼はしれっと、

「わからない」

そう言ってのけた。

「Aは大事な家族
妹って言ったら怒られるかもしれないけど、それが一番近い」

…本当に困る。

確かに私達は家族だけど、妹とか言われてしまうとは…。

「じゃあ私は、渉さんのことお兄ちゃんだと思えばいいわけ？」

そう聞き返したら、笑われてしまった。

あのさ…、何が面白いのかわかんないけど、最近私の発言で笑い過ぎじゃない？

でも彼の笑った顔は、意外に可愛い。

急に幼く見えて、真顔とのギャップが違い過ぎて驚くくらいに。

「まあ…、その方がうまくいくのかもね、俺らは
俺は末っ子だから妹はいないけど、Aはそんな感じ」









「じゃあ、私のこと本当に可愛いって思ってるの？」

「思ってる」

「いつから？」

「つい最近
てか…、ハネムーンから帰られた後くらいから」

そんなにショックだったんだ？

私に逃げられたことが。

確かに、私を箱根まで迎えに来てからの彼は、様子が違うよね。

あんなに私を遠ざけてたくせに、急に距離を縮め始めたり。

だけど私は、そんな彼の行動についていけないまま。

…というより、ますます前よりストレスを感じてるかもしれない。









その日のデートは、本当に普通のカップルのデートみたいだった。

私の服を見立ててくれたり、有名なスイーツの店に一緒に並んだり。

夜はホテルの最上階にあるレストランで食事とか。

たぶん知らない人が見たら、そこら辺にいる普通のカップルに見えるんだろうな、私達は。

本当はぐちゃぐちゃで歪な関係なのに。









部屋に帰ってきた私達は、一旦解散することになる。

彼は自分の部屋へ移動し、私は寝室へ。

だけど…、

寝室へ入った私は、すぐに悲鳴を上げてしまった。

その声に驚いて、彼が飛んでくるけど、

さすがに彼も寝室の様子を見て絶句していた。

…若葉の仕業だな。

ベッドの上には薔薇の花びらが蒔き散らかしてあって、カラフルな風船がいくつも浮かんでいた。

しばらく言葉をなくしていた彼も、そのうち喉を鳴らせて笑い始める。

「今夜も一緒に寝ろっていう、若葉からのメッセージなんじゃないの？」

彼はそう言うけど、

「まさか、今晩も一緒に寝るつもり？」

思わず聞き返してしまう。

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