40 ページ40
クリスマスの翌日からは、また普通の生活が始まり、
いつの間にか帰ってきていた彼は、いつものように朝、私を誘いに来る。
「おはよう
車、もう下に来てるって」
何事もなかったような顔をして。
もちろん車内はいつものように沈黙で、彼はこの間の弁解すらしてこない。
まあ…、私もそんな話を聞かされても困るけど。
事態が動き出したのは、終業間近のこと。
「A、３番に電話」
太輔にそう言われて取った電話の相手は、驚いたことに瑠璃子さんだった。
「お仕事中にすいません
夜に、少し時間をいただけませんか？」
か弱い声でそう告げられて、断ることなんてできなかった。
「どうしよう、太輔
さっきの電話、瑠璃子さんからだった」
そう言った途端に、太輔の表情が険しくなる。
「会いたいって、この後」
「行くの？」
「行く
なんか、今にも死んじゃいそうな声だったし」
「俺もついていこうか？」
「いい
誰かを連れて行ったら、萎縮して話せなくなるんじゃないかな、彼女」
「じゃあ、さりげなく近くの席で見ててもいい？」
太輔はそんなことを言い出すけど。
でも、近くに太輔がいてくれるなら、少し心強いかも。
待ち合わせは、会社から少し離れた場所にあるカフェだった。
私は瑠璃子さんの顔を知ってるけど、彼女のは私の顔を知らないはずなのに。
彼女はすぐに私を見つけて、席を立って頭を下げた。
「わざわざお呼び立てして申し訳ありませんでした。」
深々と頭を下げた彼女は、やっぱり電話のイメージ通り、
今にも消えてしまいそうなくらいに儚げだった。
「この間、デパートの地下でお会いしましたよね？」
そう聞かれて、私は言葉に詰まる。
気付いてたんだ？
うまく逃げられたと思ってたのに。
「私も後から聞いたんです、渉さんに」
…そういうことですか。
仲のおよろしいことで。
「本当に申し訳ありませんでした
既婚者の渉さんをクリスマスに独り占めして連れ回して」
そう言いながら、とうとう彼女は泣き出してしまった。
まるで、私が泣かせたみたいじゃん。
まだ私は、一言も発してないのに。
「私がお願いしたんです
クリスマスに私と過ごしてくれたら、婚約破棄のことは水に流すって
うちの両親は、訴えるとまで言ってたので」
…訴えるって、どういうこと？
てっきり、あっさり婚約破棄出来てたんだと思ってた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1295人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まいまい(プロフ) - あー、面白すぎます！！今頃この作品に気づきました。渉さんが愛に気づくことが出来ますように。こういうストーリーに入り込んだのは初めてです。とても面白くて、大好きなお話です。 (2021年5月4日 7時) (
レス) id: d8ffbdef31 (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - keitoさん» 確かに！なんかその２人、しっくりきますよね！言われてみればって感じで納得です！ (2018年12月20日 13時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - saryuさん» はじめまして。コメントありがとうございました。今のところ毎日更新ですが、いつ止まっちゃうかわかんないんで、ちょっとドキドキしながら書いてます(/ω＼) (2018年12月20日 13時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
keito(プロフ) - 好きすぎて実写化するならば…と、役者を思い浮かべてます。まずは主人公ちゃん。ガッキー、はるさん…うーん。なんて考えてたらシリアスなシーンでサスペンスかよってつっこんでしまいました。緩急が心地いい(*´ω｀*) (2018年12月19日 11時) (レス) id: 91adf91c90 (このIDを非表示/違反報告)
saryu(プロフ) - はじめまして、毎日ワクワクしながら更新待ってます。 (2018年12月19日 1時) (レス) id: 1be03817b0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：わかめ
| 作成日時：2018年11月16日 8時
