We believe...

36.tk ページ37

｢雄也、起きてる？｣


...昨夜は一睡もできなかった。


ぐっすり寝ていた？


よくもそんな嘘を。


｢...光くん。｣


｢おはよ。薮もさっき起きたんだ。｣


｢そう...。｣


知ってるよ。


いつもは必ず六時には起きるのに、今朝は遅かったんだよね。


聞こえているんだって、全部。


｢雄也、起きて早々に悪いのだけれど...いつまでうちに居る？あ、迷惑とかそんなんじゃなくてさ。ほら、暫く居るなら部屋とかどうしようかなーって。｣


...それも嘘でしょう？


薮さんと二人きりになりたい光くんにとって、俺は邪魔なんだよね。


わかっているよ。


｢いや、早いうちに帰るよ。...明日にでも。｣


｢そうか...。まぁ、今日は臨時休業だ。ゆっくり休めよ。｣


｢...ありがと。｣


知っているって。


薮さんが動けないから、臨時休業。


まったく、誰のせいだと思っているのだろう。


｢ごめんね。薮から聞いちゃったよ、昨日のこと。あまり人に知られたくなかったとは思うけれど...。｣


｢昨日、の...？｣


｢弟くんのことと、薮が雄也に告ったこと。｣


...二人称は『宏太』に変わったのに、俺の前では『薮』に戻るのか。


俺に気付かれているだなんて、微塵も思っていないのだろうね。


｢そっか...。別に知られたくないだなんて思っていないよ。光くんには迷惑かけちゃったみたいだし、光くんが事実を知るのは当然のことだよ。｣


｢お前...算数は出来ねぇくせにそういう事実論は得意なのな。｣


｢それ、褒め言葉？｣


｢褒め言葉だよ。...で、どうするんだ。薮と付き合うのか？｣


...よく言うよ。


二股なんて、絶対にさせるものか。


そんなの辛いだけだ。


薮さんは勿論、光くんだって...。


｢当然OKだよな。雄也、ずっと薮のことが好きだったんだろう？｣


｢...｣


...バレていたのか。


まぁ、無理も無いね。


俺はどちらかと言うと、感情がもろに表に出るタイプだから。


｢断る理由なんて無いよな。いやぁ、薮は幸せ者だよ。家事の出来る幼馴染に、可愛い彼女。ガキみてぇな友人、その嫁は死ぬほど綺麗な子。これ以上の幸せなんて存在するのか？｣


｢...わからない。｣


...わからない。


俺にはわからない。


光くんが、わからない。


｢...もしかして雄也、返事に困っているのか？｣


｢いや、別にそんなんじゃ...っ！｣


｢だったら俺からの提案、聞く？｣


｢...何、提案って。｣


｢...二股、しちゃえば良いんだよ。弟くんと。｣

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