27.ar ページ28
慧を別室にやり、裕翔の身の回りを綺麗にしてスウェットに着替えさせた。
再び慧を呼んで、二人で裕翔の目が覚めるのを待っていた。
...それにしても、綺麗な寝顔。
その彫刻のような鉄仮面の下で、この子は何を抱えているのだろう。
胸の内の感情全てを爆発させているように見えて、実は上手く伝えられなくて苦しんでいたのかもしれない。
そんな考えを持てるくらいには、今の俺はいつに無く冷静だ。
「ん...」
「ぁ...大ちゃん、裕翔くん...」
「お、起きた?」
「うん。」
慧の肩を抱いたまま、裕翔に近付いて行く。
裕翔を優先しろとは言われたものの、きっと強がっていたのだろうということは容易に検討がつく。
「大、ちゃ...」
「...おはよ、裕翔。」
「裕翔くん、大丈夫?頭痛いとか、そういうのは無い?」
「...うん。」
だるそうではあるけれど、だんだん覚醒してきたようだ。
瞼がしっかり開いて、視線も動くようになった。
「...裕翔。俺、絶対にお前のこと許さない。」
「ちょっと、大ちゃん...!」
「...だろうね。」
「慧を傷付けたこと、絶対に許せない。俺はお前のことを大切に思っているけれど、慧のことを傷付けるなら憎むことだって容易くできてしまう。...それくらい大切なんだよ、慧のことが。」
「大ちゃん...」
「...ごめんなさい。」
裕翔が静かに瞳を閉じる。
溢れる涙を堪えているのか、眉間に皺を寄せて。
「...裕翔なら、俺の気持ちがわかるだろう?裕翔だって、誰かが雄也のことを傷付けたら黙っていられないでしょ。全力で守るし、一生そいつのことを憎むと思う。違う?」
「...」
「だから裕翔は、きっと自分のことを許せないんだよね。傷付いた雄也を見て、裕翔も苦しんでいたんだよね。...もう苦しまなくていいの。もう辛い思いはしなくていいんだよ。」
「...大ちゃ...俺...っ」
鉄仮面が崩れていく。
いや、溶けていくと言った方が適切だろうか。
閉じられた瞼の隙間から絶え間無く溢れる大粒の涙。
正直、驚いた。
裕翔が泣いているところなんて今までに見たことが無かった。
...なぁんだ。
この子も普通に泣けるんだ。
この世の現象というものは、大抵が対を成して存在している。
『泣ける』ということは『笑える』ということ。
裕翔は今日この時をもって、やっと“普通の男の子”に近付けたわけだ。
まだ安心は出来ないけれど、きっともう大丈夫だよね。
根拠は、俺の勘。
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まなお(プロフ) - 蜂蜜色羽@最近同担に嫉妬を覚えてる。さん» そうですね、実際自分は兄弟で一番上なので、弟よりは兄目線が書きやすいので深いと言えば深い思いは込めているつもりですw今回はちょっとドロドロが過ぎましたね...wでも、こうやって物語の本質を見抜いてくださる方がいると心強いです!ありがとうございます!!! (2018年7月10日 23時) (レス) id: 36d920dbb6 (このIDを非表示/違反報告)
蜂蜜色羽@最近同担に嫉妬を覚えてる。(プロフ) - もう本当...複雑ですね〜、“恋は”。世界には色んな、愛の形がありますよね。それが例え、醜くても純粋なものだとしても、その人を愛している事に変わりはない...お互いがそれを望んでいるなら、私は良いと思います。素敵なお話、ありがとうございました♪ (2018年7月10日 23時) (レス) id: 31b17e5fce (このIDを非表示/違反報告)
蜂蜜色羽@最近同担に嫉妬を覚えてる。(プロフ) - 完結おめでとうございますぅぅぅ!この作品も本当に、大好きでした!いつも思うのですが、まなお様の書かれる作品には、まなお様の深い思いが、込められているのではないかと...あ、これはあくまで、私的見解なので笑 気にしないで下さい笑 (2018年7月10日 23時) (レス) id: 31b17e5fce (このIDを非表示/違反報告)
まなお(プロフ) - ひかやぶ愛ingさん» そんなに!?wまぁ最近伊野ちゃん受けが多いからひかやぶ不足ってのは頷けるな。とりあえず期待しないで待っててねw (2018年7月9日 19時) (レス) id: 36d920dbb6 (このIDを非表示/違反報告)
ひかやぶ愛ing - やぁぁぁったぁぁぁぁぁ!!!!!ありがと!ひかやぶ(拝) (2018年7月9日 18時) (レス) id: 18cd2ba58d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まなお | 作成日時:2018年5月22日 16時