We believe...

25.ar ページ26

｢慧、待っててね。今解いてあげるから...っ！｣


｢...っ｣


一向に顔を上げようとしない慧。


華奢な肩が小さく震えていて思わず抱きしめたくなるけれど、今はこの紐をどうにかするのが最優先だ。


｢慧、怪我は無い？｣


｢...｣


｢怖かったね...。もう大丈夫だからね。俺がいるからね。｣


｢...ん。｣


浅く頷いて反応してくれた。


良かった、少しは安心してくれたんだよね。


｢...よし、取れt...うわっ！！！｣


紐が外れるやいなや、慧に思い切り抱きつかれる。


怖かった、怖かったと泣きながら。


...そうか。


思い出してしまったのかもしれないな。


五年前、花火大会の会場のトイレで起きた事件のこと。


最近は平気そうにしていたけれど、心の傷は癒えていなかったんだね...。


そういえばあの日以来慧は浴衣を着ていないし、用は自宅で足すようになっていた。


...そうだよね。


癒えるわけないよね。


それなのに目の前であんな行為を見せられたら...。


そんなの、耐えられないよね。


苦しかったね...


辛かったね...


...


...許さない。


許せない。


慧のことを傷つける奴は、誰であろうと許さない。


たとえ可愛がっている子供だとしても。


絶対に許さない。


｢...慧。慧は薮ちゃんと一緒にヒカのところに行って。俺は裕翔に話がある。｣


｢...どうして...嫌だっ｣


｢帰ったらたくさん甘えさせてあげる。たくさんたくさん一緒にいる。だから今は我慢してくれないか。｣


｢嫌だよっ...｣


｢お願い...。もう慧にはここに居て欲しくないの。嫌なこと、怖いこといっぱい思い出しちゃうでしょ。頼むよ...｣


｢だめ...！大ちゃん、絶対に裕翔くんのこと傷付けるもん...。酷いことを言うに決まってる。置いて行けないよ...っ｣


｢まだそんなこと言うの！？慧は裕翔に何をされたの。一日中縛り付けられて、目の前であんなこと...。...なんでそんなに裕翔のことを庇うんだよっ！！｣


｢...っ｣


｢慧...。慧が裕翔のことを大切に想っているのはわかるよ。俺だってそうだから。だけど、今回はわけが違うでしょ。慧と雄也が最優先だよ。裕翔じゃない。ね、わかるでしょ？｣


｢違う。...ここで俺や雄也くんのことを優先したら、裕翔くんはまた同じことをする。今まで見てきた子達、皆そうだったから。加害した子が心の問題を抱えているのなら、そちらを先にどうにかしてあげないと。｣


...どうして？


どうして慧は、そんなに強いの？

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