四話 ページ5
Aside
今日は、冠番組の
自撮り動画を撮れとのお願いがあった
……特に話すこともない
特技だって言えるものもない
ましてや、キャッチフレーズなんて……
でも、撮るしかないよな
『はじめまして、岐阜県出身
15歳の成瀬Aです
まだまだ未熟ですが、これから
皆様を惹き付けられる、そんな人間に
なれるよう、精進致します
よろしくお願い致します』
……こんな感じで大丈夫かな
なんか、堅苦しい感じがしたけど大丈夫だよね
『ボクの特技は、ギターです
えっと……
想太さんで「いかないで」を弾きます』
久々に弾くなぁ、この曲
結構好きなんだ
『こんくらいでいいかな……』
ボクは、カメラを止めて
ギターを置く
『宝物……なんかあったっけ……
ぁ……』
ボクは思い出して、自分の部屋の
押し入れを漁る
『ぁ……あった』
ボクは押し入れの奥の方にあった
本を取り出した
その本には押し花がいっぱいある
その本はボクが幼い頃、公園で
周りのおとなの心の声に耳を塞いで
泣いていた時に
まだ高校生くらいのお兄さんに貰った本
ボクが"そういう"耳を持っていることを
受け止めてくれた
◇◇◇◇
＿＿ずっと辛かったね
＿＿ぁ、そうだ
＿＿この本、あげる
＿＿俺が3年かけて作った本
＿＿大事にしてね
＿＿じゃあね、不思議なお嬢さん
◇◇◇◇
その時の情景は妙に覚えてる
あのお兄さんからは心の声が全く聞こえなかった
すごいそれがボクは
嬉しかった
『ボクの宝物はこの本です
…親戚のお兄さんから貰った押し花の本です
すごい綺麗で気に入ってます』
……あぁ
嘘をつくのは辛い
ずっとボクは
こうやって
自分を押し殺して生きなきゃいけないのだろうか
やだなぁ、そんなの
ボクはボクなのに
でも
メンバーの皆さんが
ボクも耳を知ったら
どう思うだろう
……知って欲しくなんかないけど
next……
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 94人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
優 - 本当にすごいです。なんだろう、言葉が出ないくらいです。泣きました。色々と考えさせられました。ありがとうございます。 (2022年4月29日 21時) (
レス) @page20 id: 9c0ba7a296 (このIDを非表示/違反報告)
みりぽん - すごい、ですね。……すごくいい作品だと思います。心に響きました。応援しています。 (2020年3月15日 1時) (レス) id: 5ba7fc14d4 (このIDを非表示/違反報告)
クラクト(プロフ) - さききさん» ありがとうございます！ますます精進致しますのでご贔屓のほど、よろしくお願い致します！ (2019年11月25日 22時) (レス) id: f25e698725 (このIDを非表示/違反報告)
さきき - 新作ですね！ありがとうございます！！！応援しています。 (2019年11月24日 20時) (レス) id: 97f71203b8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：クラクト | 作成日時：2019年11月10日 5時
