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じゅうきゅう。 ページ21




飛びかかってきた呪霊を足でひっかけ、転ばす。
バランスを崩した呪霊を——食べるのだ。


相手の視線に、容貌に怯んでしまう。 けれど、食べないと。そうしないと、呪霊が見えなくなってしまう。救えなくなってしまう。そんなの駄目。私は全てを救うために生まれ落ちたのだから。食べなくちゃ。救わなくちゃ。怯えるなんて、救わないなんて。許されないのだから。



ふ、と笑って——この笑みが無理やりなのかそうでないのかすら分からないが、そんなもの知る必要もないのだ——呪霊に喰らいつく。


喰われる痛みからか、はたまた恐怖からか ぎゃお と叫び必死に暴れようとする呪霊。
すでに四肢をもぎ取られていることにも気づかないのか、黒とも紫ともつかないべたべたした液体、おそらく呪霊の血液が飛び散る。



———暴れる呪霊を抑えつけ、その身体に喰らいつく彼女の姿は”天使”どころか悪魔のよう。
それなのにどこか美しいのだ。

ああ、ところで””白い悪魔は、黒いやつよりなお悪い””という(ことわざ)を知っているだろうか。
とある英国の劇作家の作品のタイトルに引用され、当時有名で——いや、余計なことを話すのは控えよう。

上記の戯曲作品——その名も”白い悪魔”——は、自分自身を潔白で純粋な善人と称する人の自己認識と、現実の人となりや立ち振舞とがいかに乖離しているかという事をテーマとしたものだ。


——さて、彼女はどうだか?


おや、そろそろ食べ終わったようだ。




口の端を手の甲で拭い、呪霊の残骸を眺める。
どこか濁ったような目で、もう一体のスライム状の呪霊を探し——すでに呪霊は鮮明に見えるようになったようだ——少々ふらつきながらも、術式で”吸収”する。

呪力が十分にあれば目視できる呪霊を造り出した空間に吸い込み、祓う(救う)という術式なのだろう。

ただ、やはり呪霊を喰らわなければ呪霊が見えない、という点には多少の問題がある。
ふらついている所から察するに、喰らった直後は多少の意識混濁があるのかもしれない。



———しかし、麗の性格的に周りへ相談するとは考えづらい。







 



 

にじゅう。→←じゅうはち。



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山西 陽朔 - 面白い作品ありがとうございます。次回作に日蓮思想を題材にした作品を書くのはいかがですか?南無妙法蓮華経と唱えることで万人が成仏するという教えなら、日蓮上人の名誉さえ傷つけなければきっといい作品ができますよ。 (2023年4月30日 15時) (レス) id: aaea05e353 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:リム | 作成日時:2021年3月6日 13時

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