キャンジャニ∞の騒がしい日常【小説】 (ページ30)

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彼だけ。俺だけ。ページ30

安田side

随分とご機嫌な様子で部屋に戻ってきた、美紀ちゃん。
本人は態度に出してないつもりやけど。

ご機嫌な時に扇子で顔隠すの知ってるんやで？
笑顔なのを扇子で隠してるってことも。

でも、それを指摘せずに
「美紀ちゃん、疲れてない？なんか、飲み物買ってこようか？」

って、言うのは俺の愛情でもあるし、彼女の性格を分かってるからでもある。

我儘でプライドが高くて素直じゃない、美紀ちゃん。
そんな彼女が可愛くて、甘やかしちゃう俺。

「んー...じゃあ、ロイヤルミルクティー。砂糖多め。」

面倒くさいこの要望だって、俺は笑顔で受け入れる。
だって、好きだから。我儘ですら愛しいから。

「じゃあ、行ってくるから」

部屋のソファで寛ぐ美紀ちゃんにそう言って、部屋を出た。
すると、部屋の前には新入生が立ってて。

俺が部屋から出ると、あっ、と声を漏らすその子。
この子、確か、美紀ちゃんが選んだ子やんな？

名前は確か...沙緒ちゃん。篠崎沙緒ちゃんや。

「どうしたん？美紀ちゃんに用があるなら入ってええで？」
怯える様子の彼女に笑顔で優しく話しかける。

「あ、えっと...その...せ、先輩にさっきの質問したことについて聞きたくて...」

不安と恐怖が入り混じった表情(かお)の彼女。
そら、そうや。だって、相手はあの学園の女王様。

まさに、蛇に睨まれた蛙やな。
可哀想に思って、一緒に部屋に入ろうかと提案しようとした、その時。

「沙緒！」

後ろから、男の声がした。亮の声だ。

「亮さん...！」
彼が現れた事により、ホッとした様子の沙緒ちゃん。

「沙緒、城宮先輩のとこ行かなくてええから。」
「え、でも...」
「先輩が俺に訳を話してくれた。だから、行かなくてええ。」

暫く会話があって、終わると沙緒ちゃんは俺の方を向いた。

「えっと...失礼しました..！」

やっと肩の荷が下りたのか。ホッとして部屋へと戻る二人。

「...なぁ、少しだけええかな？」

そんな二人に後ろから声を掛けた。
きっと、今の俺、めっちゃ怖いんやろうなって思いながら。

二人は振り向いて、少し緊張した面持ちだった。

「美紀ちゃんって、嫌な性格してるけど...仲良くしたってな？
　ほんまは素直になれないだけの優しい子やから。」

じゃあ、と言って俺は飲み物を買いに行った。
ロイヤルミルクティーの砂糖多め。

きっと二人はまだ美紀ちゃんを理解できない。
多分この先も。

だって、本当に理解できるのは、俺だけやから。