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「俺が見たもの、全部が俺に届いてる。」
…じじいになった俺が見てんねん。
「…それは哲学か、何か?」
「…いや、そういうことやなくてやな、」
一から順を追ってけんちゃんは説明してくれた。
おじいちゃんになったけんちゃんは、
アンドロイドを過去に送り、それを通して私を見てる。
アンドロイドの目は何かのモニターと繋がってる、らしい。
「…でもなんで?なんでおじいちゃんになったけんちゃんが過去に遡って私を見てるの?」
「死ぬ前に一度、俺と出会う前の君に会いたかった。そう言うてた」
「…であうまえ?」
「アンドロイドを送り込んで、過去を見ることができる。
もうすぐそんな時代がくる。
…山下健二郎、はそれを使った
アンドロイドはそっくりそのまま、
その時代を生きていた本人に寄せてつくられる。
70年前の、自分に似せて、俺がつくられた。」
「ふふ、ちょっと、難しいね…、むずかしい、」
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「俺は、もうすぐ死ぬ。」
息ができなかった。
胸が、詰まるような、締め付けられるような
悪い冗談はやめてよね、
そう言って笑いあえたらよかった
はははってキラッキラの笑顔で笑ってよ
ねえ、けんちゃん
笑ってよ、お願いわらって…
きゅっと握られた手が震えてた
どこにも行かないでと、私は強く強く、握り返した
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作者名:葵 | 作成日時:2017年3月6日 20時