君は僕の春風。 (ページ2)

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入学式とオリエンテーションを終え、無事初日を乗り越えた。担任の先生が出ていくと同時に騒がしくなる教室。俺は机に掛けていたカバンを手に取ってそこから逃げるように廊下へ出た。

あーあ。自己紹介、失敗しちゃったな…。クラス全員が自分に注目していると思うと、一気に頭が真っ白になった。言いたいことは沢山あったはずなのに、名前を言った後「あ、あの…」とまごまごしてたら制限時間を過ぎてしまい先生も困った顔をしていた。

でも、一応名前は言えたからここからだ。頑張れ俺。やれば出来る。

持ち前のポジティブ思考で意識を切り替え、前を向く。そのまま玄関まで続く廊下を歩いていると。

「ジェシーくん！」

突如後ろから、よく通る大きな声で名前を呼ばれた。驚いて振り返ると、そこには朝話しかけてくれた彼がいた。心做しか、息が少し上がっているように見える。

確か名前は…

「こーちくん」

「わ、覚えてくれたんだね！」

こーちくんは小さくガッツポーズをすると、フワッと花が咲いたような笑顔を俺に向けた。それを真正面からダイレクトに受け止めてしまい、キュンと胸が締め付けられる。

"なんか、可愛い人"

それがこーちくんへの第一印象だった。

「ジェシーくん、よかったら一緒に帰らない？」

「…うん、いいよ」

「やったぁ！」

嬉しそうにとてとてと近寄ってきたこーちくんはまるで小動物みたいだ。ハムスターとかそこらへん。

というか、そそくさと教室を出て行った俺を追いかけてきてくれたの？小さく呼吸を整えてたのはそういうことだよね。

そこまでして俺と仲良くなりたいんだろうか。嬉しくて口元が緩んでしまう。

ダメだ、今日の俺口がゆるゆるだ。

バッと手で口を抑えて顔を背けると「？」って顔で首をコテンと傾げるこーちくん。

こういうあざとい仕草、無意識なんだろうな…。

「んじゃ、帰ろっか！」

そんなこんなで、俺たちは二人並んで帰路に着いた。