君は僕の春風。 (ページ1)

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出会いページ1

パキッとハリのある少し大きめな学ランに身を包み、桜が満開に咲いた通学路を歩く。

俺は今日から高校生だ。

中学三年間人見知りが直らず、一定の友達から増えぬまま卒業してしまった。

今年こそ、友達いっぱい増やすぞ！

そう強く心に決め、新しい学び舎に一歩足を踏み入れた。

玄関で新品の上履きを履き、顔を上げた先に大きく張り出された紙。それはクラス表で、同じ制服を着た新入生が屯っていた。

『クラス別れちゃったね』『やった！同じクラス！』と喜びの声と悲しみの声で賑やかだ。

そんな仲間を尻目にサッとカタカナで構成された自分の名前を見つけると、目的の教室まで歩き出した。

少し緊張したまま教室の扉を開けると、一人で本を読む者、中学から仲が良いであろう二人組、持ち前のコミュ力で早速友人を作っている者…多種多様な過ごし方をする仲間達がそこにはいた。

目立たないようにそっと入り、自分の名前の貼られた席に座る。

座ったは言いものの、何しよう…。

そう考えていると。

「ねえ、君がジェシーくん？」

「え？」

顔を上げると、黒目がちな瞳と視線が絡み合う。キリッとした眉にくりくりしたタレ目、ぽってりした唇の可愛らしい顔立ちをした男の子が俺に話しかけていた。

「あ、…うん、そうだよ」

「やっぱり！一人だけカタカナの名前みて気になって。外国の血入ってるの？」

「日本とアメリカのハーフだよ」

この自己紹介はもう慣れた。容姿が外国寄りで人見知りな俺は周りから見て近寄り難いのか、人が寄ってこなかった。それでも仲良くしてくれた数人の友達はずっと大切にしようと心に決めている。

「ジェシーくん、すごく綺麗な顔してるね」

「HE！？あ、ありがと…」

突然容姿を褒められ、一気に顔が真っ赤になってしまう。それをみてか、目を細めて微笑んだ彼に見蕩れてしまった。

ん？見蕩れて…？

『こーちぃ〜！』

「あ、呼ばれちゃった。ジェシーくん、また声掛けてもいいかな？」

「あ、うん！」

「そういや名前言ってなかった！俺、高地優吾。こーちって呼んでね！」

そう言って颯爽と去っていった彼は、まさに今の季節にピッタリな春風のような温かさと心地良さを持っていた。

「こうちゆうご。こーち…」

何より話しかけてくれたことが嬉しくて、小さく声に出して名前を反芻する。口元のニヤけが抑えきれず、誤魔化すように片肘をついて窓の外を見た。

これが、俺とこーちの出会いだった。