って君は【Taiga.K】 (ページ5)

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epiSode 5 ページ5

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「ごめん会議長引いちゃった！…あれ、京本くん」

焦った様子で息を切らし美術室に入ってきた先生。きっと階段を全力で駆け上がったのだろう。

その時にはもう大我先輩のことを描き始めようとしていて、扉の開く音に驚いた大我先輩がびくっと肩を揺らし扉の方を振り向いた。

振り向く様子の横顔が、これまた整っていて、はっと息を飲んだ。

「あぁ、せんせー。お邪魔してまーす」

「すみません、流れで、絵のモデルをしてくれる事になって」

「それは全然構わないけど…意外だね、そこ仲良かったんだ」

この組み合わせ、私が一番予想外に思っているのだけれど。はは、と笑って、こちらに向き直そうとする先輩を制止させる。

「せんぱい。横顔、描きたいです」

「えぇ、横顔？」

律儀に横を向いたまま、ええ、と首を傾げる先輩。正面からだと長い前髪に気を取られて気付かなかったけれど、後ろの髪をちょこんとハーフアップに纏めているらしい。

「それだと、Aちゃんのこと見れないじゃん」

くるりとこちらへ向き直って、つんと唇を尖らせ、何かと思えば放たれたそんな言葉。

「…え、そんな、見なくてもいいじゃないですか」

不覚にも、顔が熱くなってしまったのが恥ずかしい。だってそんな台詞、恋愛漫画でしか聞いたことがない。

「見たいよ、どんな風に描いてるのか気になるし」

嗚呼、なんだそんな事ね、と拍子抜け。確かに、人が絵を描いている手元を見るのは楽しい。徐々に作品が完成に近づいて行く過程が美しい。肩の力が抜けて、はいはい、と頷いた。

「わかりました、じゃあこっち、向いてください」

「やった。描いてる時の表情も、気になるから」

その言葉に、私は何も言えなかった。ただ、妙に熱く火照るこの体温が、伝わらないで欲しかった。

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