って君は【Taiga.K】 (ページ26)

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epiSode 26 ページ26

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画板に画用紙を挟んで、美術室の電気の真下の席に先輩を座らせてイーゼルの位置を調節する。

目鼻立ちがはっきりしていて凹凸がある先輩の顔は、影になるところ、光が当たっているところの差が付けやすそうで、やはりいいモデルだ。

「先輩、ここの席なので忘れないでくださいね、当たる光の角度が変わると全く別の作品になっちゃうので」

「おっけ、…すごいなあ」

座った席の位置を確認すると、ぽつりとそう零す先輩。何がだろうと首を傾げた。

「そんなさ、絵で光の当たり方がーとか気にしたことなかった。大事な事って沢山あるんだね」

まただ。ひとつひとつ、掬っては噛み砕き褒めてくれる、先輩のいいところ。

人の努力を笑わないし、いい所を見つけようとするし、理解しようとする。それって、実はかなり難しい。

人にそうできるのは、先輩が、努力している人だからなのだろうな、と思った。

「先輩は、歌を歌う上で、心がけている事とかありますか？」

いつも褒めてもらいっぱなしでは擽ったくて、今度は先輩に問いかけた。

密かに気になっていた。もっと先輩のことを知りたいし、先輩が好きな歌のことだって知りたい。

画用紙に大体のアタリをつけていると、先輩の口が開く。

「うーん、なんだろ。喉を痛めないようにはしてるかな、濡れマスクしたり、辛いものは避けたり」

「へえ、根本的だけど、すごい大事ですね」

「あとはやっぱり、この曲はこう歌おう、こう表現しようって自分の中で考える時間は、大事にしてる」

歌のことを話す先輩の目は、真っ直ぐで、輝いていた。一言一言、自分の考えを大事に口から紡ぎ出す声が、丁寧だった。

そんな先輩が、やっぱり、好きだ。改めて感じていたら、手も止まっていた。

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