って君は【Taiga.K】 (ページ19)

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epiSode 19 ページ19

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先輩の長い睫毛の一本一本を筆で生やしてやりながら、先程の歌声への感心が冷めやらぬ私。

「先輩は、歌の道に進んだりするんですか？」

「うん、まあそんなとこかな。音楽、好きなんだ」

あれだけの武器を、先輩が持っていたなんて。

その道には一切詳しくも、背景も知らないくせに、先輩ならきっと大きくなれる、と無責任に、思ってしまった。

「すごいなあ…私も、負けてられませんね」

「Aちゃんは、やっぱり美術の道？」

「そう、ですかねー、多分…まだ曖昧なんですけど」

好きなものを、将来まで武器にするという勇気は、私はまだ持ち合わせていない。

「まだ、時間あるしね。焦らなくていいと思うよ」

言い様のない将来への不安感を抱えていた私にそう言う先輩の瞳は、説得力と、私を安心させる何かがあった。

「あ、でもね。俺がAちゃんの絵が好きだっていうのは、絶対間違いないから」

芸術を取り扱う者にとって、きっと個人差はあると思うけれど、“上手”よりも勝る褒め言葉は、“好き”だと思う。

私も、先輩の歌声が好き、と伝えたかったのに、なんだか照れてしまって言えなかった。

美術と音楽。種類こそ違えど、先輩が同じ芸術の道を志しているということが、嬉しくて。

もっと、頑張ろう。漠然と、そう思った。

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