って君は【Taiga.K】 (ページ12)

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epiSode 12 ページ12

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「そういえば、この前帰ってから少し描き進めたので、見てもらえませんか？」

「え！ほんと？見たい見たい」

金曜日に描いた先輩の絵。この土日は特にすることも無く暇だったから、次直ぐに色を乗せられるように更に鉛筆で細かい所を描き込んでおいたのだ。

紙が折れないように鞄から絵を取り出し、お互い食べ終わって片付けの済んだ机に広げる。

「…おお、綺麗に整ってる感じがする。すげえ」

「あ、でも今実物と見比べたら、もっと唇厚い方がいいかも」

絵を描くという行為に終わりは無い。何処まででも描き込めるし、一筆で終わらせる事だって出来る。完成は、自分で見極めないといけない。

金曜日ぶりにモデルである先輩の顔を見て、やっぱりここはこうした方が、という思案が次々に浮かんでくる。

もっと睫毛の主張はあってもいいかも。肌が白くて綺麗だから影を乗せて凹凸を作っていこう。眉毛はもう少し凛々しく。

紙と先輩を見比べて難しい顔をしていたら、ふっ、と先輩の笑う声。

「え、あっすみません、めっちゃ見ちゃって」

「いや、大丈夫。なんか、真剣で可愛いなって」

我に返って謝ると、口元を抑えながらそう答える先輩。可愛い、って。

「え、…それは、…またからかってます？」

「そうじゃないよ、本当に」

にこにこと笑っているけれど、優しいその目は冗談を言っているような目では無かった。

「そうやって何かに真剣になれるのって、すげーいいと思うからさ」

私の目を見据えてそう紡ぐ彼は、まるで私の全てを認めてくれているようなあたたかさで。

昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴っても、ぽかぽかに包まれた様な胸の火照りは覚めなかった。

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