って君は【Taiga.K】 (ページ1)

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epiSode 1 ページ1

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「Aさん、また残ってたの？」

「あー、ごめんごめん、すぐ帰るね」

聞き慣れた、親しい先生の声にはっと我に返ると周りには誰も居なくなっていて、嗚呼またこんな時間まで没頭していたのかと自分に呆れ笑い。

「いいよ焦らないで。好きなだけ描いてて」

校舎の三階の端っこ、よく陽の光が入って絵の具で汚れた机が赤く照らされる午後5時半。

学校の中で一番好きなこの美術室で、部活動の時間が終わってもまだ大好きな絵を描き続けて先生に笑われる、これが週に二回のお決まりだった。

「今日は何描いてたの？見せてー」

「まだ完成してないけど…クラスの相田さん」

「おお、いいじゃん！やっぱり水彩上手いね」

「先生みたいに油絵も上手くなりたいんだけどなあ」

帰る前にこうしてその日描いていた絵を見てもらって、修正点はしっかりと聞いて頭の中にメモをして。
先生と一緒に美術室を出て、先生は職員室へ、私は下駄箱へ向かうまでにくだらない雑談をしてから帰る。

友達はいるけれど、出掛けて遊んだりするよりも絵を描いている時の方が好きで。
美大を出ている先生にあれやこれやと相談しながら美術室にこもっている時間が、何よりも好きで。

今日もいつも通り、描いていた絵を持って帰り、先生に言われたポイントを思い出しながら、家で続きを描いている。

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