求婚...年の差３ (ページ8)

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８話目ページ8

適当なコースを選んで注文を済ませ、ぼーっと窓の外を眺める。

海が好きなAは黙ったまま、景色を眺め続けていた。

「オレンジ色から群青色が混ざっていくね。」

「...おう。気に入った...かよ？」

「うん。勝己兄ちゃんと今年初めてのデート...それだけでも嬉しいのに、こんな景色まで見れて...幸せ。」

フフ...と笑うAの横顔は、もう大人の女性そのもので...思わず「綺麗んなったな。」と話しかけてしまう。

「え？何が？このホテル？」

目を真ん丸くして俺の方を向き、辺りをキョロキョロと見回し出した。

「...ちげぇ...わ。」

気恥ずかしさでもう１度言う気にはなれず、肩肘をついて視線を逸らす。

Aは不思議そうな顔をしたまま、俺の顔をじっと見つめてきた。

「ね、勝己兄ちゃん、聞いてほしい事が...あるんだけど？」

「んだよ？」

「勝己兄ちゃんは...私が卒業したら、すぐに結婚したい？」

「あ？あー、どうだろう...な。A次第だろが？」

本音では今すぐにでも結婚したかったが...Aはまだ若いし、したい事もあるだろうと任せるつもりでいる。

「...仲良い先輩が、勝己兄ちゃんのコスチューム作ってるサポート会社から内定貰ったらしくて。その話を聞いてたら、私もそこに入ってみたいなって思ったの。」

「入ってどうすんだ？ま、止めはしねぇけどよ。」

「いきなり勝己兄ちゃん専属のサポートになるよりも、ちゃんとその現場を見ておきたい。開発の仕方とか、制作過程とか。」

体を少々前のめりにさせて力説してくる姿に、俺は頷くしかなかった。

「...そうかよ。その前に...卒業出来んのか？」

「今の所は付いていけてるし、前よりも学校楽しくて！」

さっきの表情とは打って変わって、今度はガキの様な顔をして笑う。

「気ぃ済むまで好きな事してから嫁に来いや。俺は逃げねぇからよ。」

「う、うん。ありがとう。」

Aの頭を撫でようとした時、前菜が運ばれてきて...俺は慌てて手を引っ込めた。

「勝己兄ちゃん、ナイフとフォーク難しい。」

「好きな様に食え。そのうち覚えんだろ。」

「覚えれる...かな？うーん...。」

少々悪戦苦闘する姿を見ながら、２人でゆっくりとディナーを楽しんだ。

「部屋...行くか？」

食後のコーヒーとデザートを食い終わり、カードキーを出してAに聞く。

「う、うん...行く。」

顔を赤く染め、所在なさげに手をもじもじさせながら頷いた。