４８話目 ページ48
季節が流れる様に過ぎていき、臨月を迎えている。
８ヶ月からは体調等の管理の為にAは入院していて、明日に帝王切開で出産する事が決まっていた。
「もう...苦しい。胎内暴力反対〜。」
辛そうな顔で横になり、腹をポンポンして項垂れる。
最近は腹の子が交互に動き回り、胎動も激しくなっていて睡眠不足気味らしい。
「もうすぐ外に出れんだから大人しくしとけや、暴れん坊共。」
「明日会えるんだね。勝己兄ちゃん、パパになるよ？」
「Aはママ...か。信じらんねぇな。」
他愛も無い会話をして帰宅し、その夜はなかなか寝付くことが出来無かった。
(ガラにもなく緊張...しとんな。)
何度も寝ようと試みたが眠られず、結局一睡もせずに手術の時間を迎える。
「行ってくるね。元気な赤ちゃん達にもうすぐ会えるよ。」
「...おう。頑張って来い。」
看護師が迎えに来て、Aは車椅子で手術室に向かった。
それからの時間はとても長く感じ、時計を見ては立ち上がり、時計を見ては椅子に座るを繰り返し続け...。
「爆豪さん！おめでとうございます。２男１女、とても元気なお子さんです。」
ガラガラガラ...音を鳴らし、赤ん坊が入るコットを押して看護師が叫んだ。
俺は走る様に駆け寄ると、開口一番に聞いたのはAの事だった。
「はい、順調です。縫合が終わればこちらに戻ってきますよ。」
それを聞いて安心した俺は、赤ん坊達をまじまじと見つめる。
(...こいつはAに似とるな、こいつは...俺か。こいつも...A...か。)
ふにゃふにゃと泣き、手足をゆっくりと動かすその姿に胸が熱くなってくるのを感じた。
「撫でてあげて下さい。」
「あ、はい。」
そっと...壊れそうな小さな手に触れ、小さな足に触れてみる。
「この手足で...暴れとったんか？」
しばらく眺めているとAが戻ってくるとの連絡が入り、赤ん坊達は新生児室へ。
部屋に戻ってきたAは両腕に点滴の管、口には酸素マスクを付け、辛そうに呼吸をしている。
「わかるか、俺だ。」
「勝己...兄ちゃん...。」
Aの体を包む様に優しく抱きしめ、俺は心から礼を言った。
「よく頑張ったな。俺を父親にしてくれて...ありがとう。A...愛してる。感謝の言葉しか出ねぇ...よ。」
Aはニッコリと微笑み、眠りに落ちていく。
その寝顔を見ていると感謝や感動や...色んな感情で胸が詰まってきて、目から涙がこぼれ落ちた。
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作者名：梅シロップ | 作成日時：2017年9月25日 3時
