求婚...年の差３ (ページ44)

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４４話目ページ44

「おい、ここで契約しちまうぞ？物干し部屋があるとこが良いっつってただろ？」

パソコンを見ながらAに声をかけるが返事がない。

後ろを振り向くと資料片手に眠りこくっていた。

結婚まで後半年。

休みの度に結婚式場や新居を見に行ったりしていたが、それと並行して複雑なコスチューム開発に携わったAは多忙を極めている。

「...ご苦労さんなこった...。」

手からそっと資料を取り上げ、ベッドに運んで寝かせてやった。

その隣に俺も寝転び、無防備な寝顔に唇を合わせる。

「ガキん時の面影...ねぇな。」

俺にまとわりついていた時の幼さは抜け、高校の時よりも更に女らしくなっていた。

薄化粧をする事を覚え、長い黒髪は軽く巻き髪に。

(化粧落としてねぇんかよ...。)

ベッドから抜け出し、Aの化粧ポーチを漁る。その中から化粧落としシートを取り出して、顔をそっと拭いてやった。

「ん...んん...眠...い...。」

「寝とけ、化粧落としてやっから。肌荒れんぞ。」

「ありが...と。」

薄らと目が開いたと思えば、またすぐに寝息を立て始め...。

「あんま無理すんなよ？」

ポンポンと頭を撫でて、俺はシャワーを浴びにバスルームに向かった。

「あーっ、寝ちゃった！勝己兄ちゃん、ごめんね。」

翌朝...まだ眠る俺に抱きついてきて、申し訳なさそうな声を出すA。

「せめて化粧位は...落として寝ろや。」

「うぅ、はい。」

「もう少し寝とけ。...くっそ寒ぃ。」

Aを抱き寄せ、包み込む様に抱き締める。

「ほんと、寒いの苦手だよね。」

もぞもぞと動き、俺の胸に顔をうずめてきた。

「冬は...いらねぇ...。」

うとうとしかけた時、俺の電話が鳴り響き、布団から腕だけ出してスマホを取った。

「...デク？朝っぱらからうるせぇ。」

『ごめん！警備の手が足りなくて、かっちゃん来れないかな？』

「...何処だよ？」

俺が聞くと現場の場所を簡単に説明してくる。

「わーった、仕方ねぇな。」

ちゅ...とAの頬に唇を合わせ、ゆっくりとベッドから出た。

「勝己兄ちゃん、お仕事？」

「おう、手が足りねぇんだとよ。ったく、今日は非番だったのに...。悪ぃな。」

「あ、じゃ、朝御飯「食ってく暇ねぇわ。晩飯楽しみにしてっからよ？」」

洗面に行って簡単に身支度を整え、俺は急いで家を飛び出す。

外に出ると初冬らしい寒さが俺にまとわりついてきて、舌打ちをしながら車に乗り込んだ。