３９話目 ページ39
それから季節はあっという間に巡り...夏が終わろうとしている。
「...うーん、夏バテだぁ。」
綺麗な指を小傷と機械油だらけにし、ファミレスのテーブルでAはだるそうに欠伸をした。
「ちゃんと食ってんのかよ？好きなもん頼め。」
「食べてるよ！食べてるけど食欲無くて...。ほら、開発に入ると周りは機械とか熱源だらけでしょ？何とか口に放り込んでる...が正解かも。」
メニューをパラパラと捲って「何にしようかな？」と小声で呟く。
「...そこは飯じゃねぇ、デザートだろが。」
Aの手からメニューを奪い取り、お食事の所を開いてテーブルに置いた。
「食べたい物...無い...。アイス食べたい...。」
「アホか、そんなんで社会人務まるかよ。食うのも仕事のうちだと思え。」
「無理...勝己兄ちゃんは夏バテしないの？現場、外ばっかなのに。」
「あ？んなヤワな体でヒーローやってねぇわ。それに...夏は好きな季節だしな。」
にやっと笑って見せると唇を尖らせ、メニューを物色し始める。
細い手首に付けているブレスレットがシャラ...と鳴り、俺は手を伸ばした。
「指輪...いつ買いに行くんだ？もう両家への挨拶は済ませたし、先延ばしばっかすんなや。」
「...ん、年末...って、勝己兄ちゃん忙しいね。ブランドとかよくわかんないから勝己兄ちゃんに任せる〜。」
「研究してる時の情熱をちったぁこっちに回せ。俺は２人で決めてぇんだよ。」
テーブルに置かれた水を一口飲み、呆れ顔で天井を見上げる。
「...じゃ、この後...は？宝石屋さん、緊張するから苦手なんだけどな...。」
「苦手とかそういう問題じゃねぇだろが。わーった、この後な。」
俺はスマホを取り出し、何件か目星を付けておいた店の場所を確認した。
「確か...月収の３倍が目安「さ、３倍！？」」
「って...世間的に言われてんだろ？」
「そ、そんな豪華なの勿体ない！！指輪にそんなに使うのなら...どうせなら...その...。」
俺が店のドアに手をかけた瞬間、突然口ごもり...モニョモニョと言い出す。
「...んだよ？ハッキリ言えや。」
「結婚してから新居の...資金にして欲しい。あの...憧れてる家具があってね、それが高くて...。」
「んなもんいくらでも買ったるわ。んな心配いらねぇ位は...稼いでるからよ？」
「で、でも...「俺の女にちゃっちぃもん付けさせたくねぇんだよ。」」
そっと肩を抱き、コツンと額に頭をぶつけ、宝石店の中へ２人で入った。
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作者名：梅シロップ | 作成日時：2017年9月25日 3時
