求婚...年の差２ (ページ15)

今日:23 hit、昨日:5 hit、合計:83,566 hit

１５話目ページ15

夕方18時を過ぎ、警備を頼まれていた仕事は何事も無く無事に終わった。

休憩所に戻って主催者に挨拶をして帰ろうとすると、「君の車は出せそうにないよ。」と呼び止められる。

「...すんません。ご迷惑をお掛けして...。」

「いやいや、気にしないよ。それよりも...どうやって帰るかだね。タクシー呼ぼうか？」

「自分で呼んで適当に帰ります。明日もよろしくお願いします。」

頭を下げて休憩所を後にした。

(...今日はコスチュームで来ちまったから...この形じゃ目立つな...。)

俺は仕方なく、催しがされていた公園の入口の花壇に腰を下ろし、タクシー会社に電話をして迎えに来てもらえるように依頼をする。

電話を切ってぼーっとしているとスマホが震え出し、メールを受信した。

『こっちは相変わらずのマスコミの数。今日は直帰した方が良いべ？』

クソ髪からのメール。

『コスチュームのまんまでかよ！？無駄に目立っちまうわ、くそが！』

『車だろ？』

『その車が出せねんだよ！マスコミが群がりやがって！タクシー呼んだっつーの！』

『何処かで待ち合わせすっか？車で向かうわ！』

『俺の実家近くの公園まで頼む。速攻で来いよ！』

メールの返信を送っていると、目の前にタクシーが止まった。

目的地である公園の名称を伝えてタクシーに乗り込むと、運転手が目を白黒とさせて俺を珍しそうに眺めてくる。

「...爆心地...さん？」

「...うす。」

「うわぁ！有名なヒーローの方に乗っていただけて光栄です！」

「そ...すか。」

内心くそめんどくせぇと思ったが...この姿でいる以上...あまり邪険には扱えない。

「私も子供の頃にはヒーローに憧れましたが、悲しい事に無個性でしてね。今程珍しくは無かったですが、夢を諦めるのは辛かったです。」

「無個性...すか？」

「アハハ...お恥ずかしい限りです！」

頭をガシガシとかき、ニコニコと笑う運転手を見ながらデクを思い出していた。

「あ、すみません、変なお話をしまして。」

「無個性でも...おかしくないっす。個性が無いのも...１つの個性っす。」

「個性が無い個性ですか？確かにそう考えられますね！ありがとうございます。」

前を向きながらペコッと頭を下げる運転手。

「...いえ。」

無個性のクセに正義感が強くて、困った人をほって置けなくて、俺にいじめられてもいじめられても立ち向かってくる。

足掻いて足掻きまくっていた頃のデクの姿が頭に浮かび...少し胸の奥がチクリと痛んだ様な気がした。