16枚目 ページ18
――…
「おはよ、紫藤さん」
今日は天気が良い。木漏れ日溢れる森の中は空気も綺麗。昨日の不安の声が嘘のようだ。
一歩一歩踏みしめて、森の声を聞いていた私に、違う声。
『……あ、おはよう、赤羽君』
「今日早いね? ここも何かの当番制なの?」
『何が?』
「あ、違うのか。てっきり花壇の手入れとか任されているのかなぁって」
『ううん。今日は不安だったから』
山道で出会った赤羽君とゆっくり歩く。歩くのが遅いって良く言われてるんだけど、そんな私によく手足の長い赤羽君は合わせれるなぁ。
『赤羽君も歩くの遅い人?』
「……ん?」
『一緒に風の音、聴く?』
「相変わらず何言ってるか分かんないなぁ」
友達いる? なんて急に失礼な事を言われた。思わず顔を上げると、失礼な事を言った張本人はニコニコしてる。
『いるよ』
「人間の、だよ?」
『……』
人間の? 赤羽君の意図する事が分からずに考え込む。小人さんは赤羽君にとって人間カウントされてないって事だろうか。まぁ確かに小人さんとは友達ではない。友達、なんて存在を隠してる彼らの為にも大っぴらに言えない。
黙りこくった私をどう捉えたのか、赤羽君が喉を鳴らして笑った。
「俺がいて良かったね?」
『……何で?』
「俺が戻って来なかったら紫藤さん一人だったんじゃない?」
『……赤羽君が居ると私は一人じゃないの?』
「そうじゃないの?」
お互いに足を止めて顔を見合わせる。坂道のお陰で赤羽君の不思議そうな顔が見えた。
『……何で赤羽君がいると、私は一人じゃないの?』
もう一度同じ質問を繰り返すと、今度は頬を引き攣らせる赤羽君。
小さな声で、あれ、ん? と考え込む赤羽君は、引き攣った笑みのまま私に向き直った。
「……もしかして俺、紫藤さんと友達じゃない?」
『えっ、友達だったの?』
……何故か風の音しか聞こえなくなってしまった。
38人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
葵(プロフ) - あやめさん» お返事遅くなってすみません! コメントありがとうございます、嬉しいです! 8割以上私の力ではないので散々自慢させて頂きますね!! これからもよろしくお願いします!! (2020年9月14日 21時) (レス) id: df60a0bf96 (このIDを非表示/違反報告)
あやめ(プロフ) - めちゃくちゃ面白かったです!!!!これからもがんばってください!更新楽しみに待ってます!! (2020年7月10日 17時) (レス) id: 2cb5bf810d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:サヤ x他1人 | 作者ホームページ:https://twpf.jp/uranai_aoi
作成日時:2020年4月4日 3時