しつけぇわ！８ ページ22
「美味しいっ！卵のトロトロ具合も私の好みにピッタリです！」
「たりめぇだ。これを教わったのはAのおばさんなんだからよ。」
「へぇ...お母さんが。」
中学の時、あまりに美味くて作り方を教えてくれと頼み込んだ。
おばさんは笑顔で頷き、「こんなんで良かったら。」とレシピのメモまで手渡してくれた。
「つうか、職場に連絡は良いんかよ？」
「あ、あー、はい。今日はお休みもらってたんで。」
「んなら...急ぐ事はねぇな。先に職場に顔出して、そっから家に行って着替えを持ってくるか。」
「そうですね。」
何となく浮かない顔になり、齧っていたパンを置く。
「どうした？何か気に障っ「仕事...別に大丈夫ですよ。話に行ったりしなくても。」」
「個性事故にあっとんのにか？」
「い...え、辞めようかと考えてたので、この機会にいっそ...と。」
「やっと入れたっつって喜んでただろが...？確か受付嬢してたんじゃねぇんかよ。」
この面...何か隠してやがんな。ガキの頃と一緒じゃねぇか。
チラチラと自分の手と俺の顔を交互に見る時は...嘘付いてる仕草。
「そう...なんですけ「根性がねぇから...へこたれたんかよ？」」
「そんな「そんなもこんなも辞めるっつう事はそういう事だわ。」」
キツイ言い方なのはわかってっけど、こうでもしねぇと正直に答える様な奴じゃねぇ...。
「辞めたく...辞めたくないけどっ！毎日怖いくらいに言い寄ってくる人がおって...気持ち悪いから辞めんの！上に相談しても収まらんし...もう嫌やねん！」
「いつから言い寄られてんだ？」
「に...入社してすぐ...から。」
「...ったく...んな事あんなら言えや。」
痩せ我慢し続けた結果の辞めてぇ...かよ。
どうしてやろうかと思案しているとAは恥ずかしそうに話し出した。
「おかしいですよね。爆心地さんの記憶無いはずなのに言うたらあかんって思うのは。元の私の記憶なんでしょうね。」
「敬語気持ち悪ぃっつったろうが。さっきキレたみてぇに普通に話せ。」
「あ、はい...あ、うん。」
しどろもどろで返事をして食器を片付け始める。
いくら身内でも会社に乗り込むのはねぇし、相手を締め上げる訳にもいかねぇな。
んなくっそつまらねぇ事でAが辞めんのは許せねぇ。
「会社の名前、教えろ。」
「○×ホールディングス。」
○×...！？確か...あいつの？
ある奴が頭に浮かんだ俺はスマホを持ち、「ちょっと待ってろ。」と外へ出た。
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作者名：梅シロップ | 作成日時：2018年10月28日 0時
