たまたま１４ ページ3
「昼飯、一緒に食わねぇ？」
「勝手に一人で食べ「実はAのマンションの前に居たりして...。」」
テヘッという感じで笑う電気に呆れ返り、「鍵開けとく。」とだけ言って電話を切る。
「うぇい、お邪魔しまーす！」
「もう...いきなりはやめてや〜。一応私も女やねんで。」
「寝起きでも可愛いって！その寝癖も可愛い！」
「相変わらず軽い口調でありがとう。」
指差された髪を撫で付け、ふいっとそっぽを向いた。
「どっち食う？こっちは中華丼でこっちは麻婆丼。サラダは同じの買ってきたから。」
「もし私がおらんかったらどうしたんよ？」
「そん時は...俺が２つ食うんじゃね？」
何がそんなに面白いのか...ヘラヘラと笑って「どっち？どっち？」と聞いてくる。
「...こっち。」
「じゃ、俺こっち〜！あー、腹減った。いただきます！」
勢い良く手を合わせ、ガツガツとあっという間に平らげた。
「電気、今日は仕事「あっ、やべ！そろそろ現場戻らねぇと！！」」
「げ、現場！？今仕事中って事！？」
「Aの顔見たかったから...タクシー飛ばして来ちまった！」
そう言って立ち上がると私の頬に触れるか触れないか位のキス。
「な、な、何「ちゃんと食べろよ〜。また仕事終わったら連絡する！」」
唖然とする私を放置して、滞在時間10分で電気は颯爽と帰って行った。
「な...に...してん...のよ。」
微かに唇の感触が残る頬に手を当て、カラになったお弁当の容器を見つめる。
...気にしてくれんのは嬉しいけど...。
暫くそれらをボケっと眺めているとまたスマホが着信を知らせてきた。
画面には«爆豪さん»と出ていて、慌てて通話ボタンをスライドさせる。
「飯は食ったんかよ？」
「あ、はい！昨日はありがとうございました。」
「おう。まぁ飯は口実で声聞きたかっただけ...なんだわ。」
電話口でクスッと笑う声が聞こえてきた。
声が聞きたかった...とか歌の世界やん！めっちゃ照れるし...。
「あ、アハハ、こんな声で良ければいつでもどうぞ。」
「んなら、朝昼晩ってかけんぞ。」
「それはさすがにお仕事に支障が「気持的にはんな位かけてぇけどよ。何かあったらすぐに電話して来いや。じゃあな。」」
ブツっと切れる音がし、無機質な音が聞こえてくる。
な、何や...。あかん、グラッと来てしまうわ、今の。
力一杯口説かれている台詞に心臓はバクバク。
「か、勘弁して。甘い言葉に耐性ないし。」
両頬を押さえ、テーブルにぐったり倒れ込んだ。
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作者名：梅シロップ | 作成日時：2018年10月28日 0時
