猫１０ ページ10
「爆豪さん！目が覚められたんですね！良かった！」
突然...Aが現れて面食らっていると、点滴を替えていた看護師がフフフッと笑い出した。
「何...すか？」
「良い彼女さんをお持ちですね。ちょっと度が過ぎますけど...。」
「...は？」
看護師の話では...俺が運ばれてすぐからAは俺から離れようとせず、ずっと朝から晩まで側に居たらしい。帰るように言っても首を横に振り、俺の手を握り続けていたと。
目が覚めた時に居なかったのは、家に着替えに行っていたからで...。
「てめ...何しとんだ？仕事は？猫は？」
「猫達の面倒は見に帰ってました。」
「仕事は！？」
「...行って...ません。」
青白い顔をクシャッと顰め、視線を俺から逸らした。
「デクには何て「何にも言ってません。所長がここに来た時も私は...爆豪さんの側に居て、仕事に戻るように言われましたが返事...しませんでした。」」
「何を考え「爆豪さんがそんな状態だと聞いて、仕事が手につかなくて...離れるのが心配で辛くて...それで。」」
イラァっとして叫び出しそうになるが...ここは病院の中。
ちっと舌打ちを一つ打ち、感情を抑え込んで目を閉じた。
「とりあえず...帰れ。」
「でも私...あ！...所長...。」
「かっちゃん！かっちゃ...ん。」
デクは俺の手を強く握り、「良かった。」と涙声になる。
「泣くなや、うぜぇ。」
「うん...ごめ...ん。」
しばらくの間３人の間に沈黙が流れ...デクが低い声で話し始めた。
「勅使河原...さん、もう君はクビだよ。」
「っ、申し訳...ありませんでし...た。」
聞いた事の無い低い声のデクにAは顔を引き攣らせ、深く頭を下げる。
「新しい職場は僕が見つけておくから、そこではしっかりと働いて欲しい。良いね？」
「ちょ、デク！クビはねぇ「仕事に私情を持ち込むのは...君も嫌いだろ、かっちゃん？」」
感情が消えた様な冷たい目で俺を見て、深くため息をついた。
「勅使河原さん、次の事務所の所長は気難しい人だから、気合い入れて働いてもらわないと...困るよ？」
「はい！本当にご迷惑をおかけしました。お世話に...なりました。」
「次はゆっくり来るね、かっちゃん。予定が立て込んでるんだ。」
Aに向かって頷き、最後はふんわりとした口調で微笑むと病室のドアに向かって歩き出す。
「ま、待てや。こいつ連れて帰れ！」
デクはピタ...と立ち止まり、あははと楽しそうに笑って振り向いた。
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作者名：梅シロップ | 作成日時：2018年2月3日 5時
