猫８ ページ8
「あ、ありました！ありがとうございます！」
家具の隙間から何かを見つけ、大切そうに胸に抱える。
「じゃ、戻すぞ。」
幅の広い食器棚を動かし、元の位置に戻した。
「良かった。これ、返さないとダメな物で...。」
手の中を見るとアクセサリーを入れる箱？
「プロポーズでもされたんかよ？」
「あはは、まさか。デクさんに...お付き合いして欲しいって渡されたんです。貰えないって言ったんですけど、強引に押し付けられちゃいました。」
(デクに...貰っただ？)
胸にザワッとしたイラつきを感じ、ぶっきらぼうに返事をした。
「付き合えば...良いんじゃねぇか？」
「...え？」
「Ｎｏ１ヒーローで、将来は有望も有望。あいつの性格なら死ぬまで大事に「そうでしょうね。でも...これを返してお断りするつもりなんです。」」
「好きな奴でも居んのか？」
そう聞くと「はい。」と幸せそうに微笑んだ。
(好きな奴...か。これじゃ後釜は狙えねぇな。)
正直、こいつと居ると居心地は良いし、飯は美味いし、素朴な優しい性格で...デクが好きじゃなけりゃ...と思う様になってきてたが...。
でも好きな奴がいる以上、進展は望めない。
「へぇへぇ、ご馳走さん。んな面して笑うなや。」
「へ、変な顔してましたか！？」
「おう。鼻の下伸ばして...ぶっさいくな面！」
その途端、ぶわぁっと一気に顔を赤く染め、手でパタパタを扇ぎ始める。
「嘘だっつうの。ま、頑張れや。じゃな。」
「あ、帰られる「やんなくちゃいけねぇ資料があんだわ。くっそだりぃ。」」
後ろ手に手を振り、モヤモヤとした気持ちでAの家を後にした。
「明日から出張に行かれるんですか？」
「おう、10日程な。新人ヒーローの研修。俺より適任の奴いくらでも居んのによ。」
子猫の貰い手が見つかったと上鳴から連絡が来て、それを伝えに来ている。
「そうですか。大変です...ね。」
「だからよ、貰い手に合わせるのは10日後以降になんだわ。」
譲渡するのが余程心配らしく、浮かない顔をしているA。
「んな心配すんな。俺も知ってる奴だからよ。」
新しい飼い主は...何と相澤先生。
まぁどうせ上鳴が頭下げまくってゴリ押ししたんだろう。
「わかりました。出張から戻られたらLINE下さい。それまで子猫達といっぱい遊んでおきます。」
俺が頷いて微笑むと「おやすみなさい。」とまた寂しそうな表情を浮かべ、そっとドアを閉めた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 61人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：梅シロップ | 作成日時：2018年2月3日 5時
