銭湯１ ページ50
「大人１人。あ、ついでに石鹸１つ。」
「いらっしゃいませ。えっと...小さい方で良いですか？」
「おう。今日は忘れただけだかんな。」
「470円になります。」
「わーった。」
小銭を番台に並べ、石鹸を受け取って脱衣所に行く...爆心地。
ここは下町の小さな銭湯。
の、前に私の自己紹介。
湯屋A、20歳。
祖父と祖母が切り盛りしている銭湯を手伝うようになったのは二週間前。
お婆ちゃんが転んで怪我をし、治るまでの代打。
お父さんは銭湯を辞めろとおじいちゃんに言ったんだけど、大きくて暖かい雰囲気のこの銭湯が大好きな私は大反対で「私が何とかする！」と勢いで言って...しまった。
年頃の娘にしては男湯丸見えの番台はなかなか辛い...。
見ないようにしたいけど、お年寄りも多くて恥ずかしいとか言ってられなくて...。
あ、そうそう、爆心地に気付いたのは私が座り出して３日程経った頃。
イケメンの筋肉ムキムキなお兄さんとしか最初は思ってなくて、電話で話しながら帰るお兄さんが「デク、舐めとんのか？」と言ってたのを聞き、爆心地だと...気付いた次第です。
(家にお風呂あるだろうに...銭湯好きなのかなぁ？)
そんな事を考え、雑誌をパラパラと捲って時間を潰す私。
今は24時少し前。
閉店間際の女湯はもうお客さんが居なくて、後は男湯のお客さんが帰るだけ。
「ありがとね〜。」
「あ、ありがとうございました。お気を付けて。」
常連のおじさんが首にタオルを巻き、上機嫌で帰って行く。
「うー、眠。」
「...でっけぇ口しとんな。」
気が緩んで思いっ切り大きな欠伸をしてしまい、慌てて口を抑えて声のする方向を見た。
「牛乳の値段教えてくれや。」
「ひゃっ、110円に...なります。」
片手に牛乳瓶を持ち、番台に顎を乗せて笑っている...爆心地。
(う、お耽美なお顔...。)
思わずまじまじと見つめてしまい、爆心地は眉を潜める。
「何か付いとんのか？」
「い、いえ、ごめんなさい。」
「つうか、何でんな所で働いとんだ？」
チャリっと小銭を番台に置き、牛乳の蓋を開けて美味しそうに飲んだ。
「ここの...孫なんです。お婆ちゃんが怪我して...。」
「あー、だから婆さん居ねぇんか。」
「あの、その...爆心地...さん...ですよね？」
「お、おう...。」
迷惑そうな顔をされるかと思いきや、照れた様な表情になり、何だか私まで照れくさくなってしまった。
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作者名：梅シロップ | 作成日時：2018年2月3日 5時
