猫５ ページ5
「んなら...俺に会った事あんな？」
「はい。事務所を立ち上げた時のパーティの時、後は何度か事務所に来られた時にお会いしていますね。」
確か...デクの事務所に目立たない地味な事務員が居たなと思い出した。
あの事務員とこの無防備な女、全く同一人物だとは思わなくて...事務員をしているこいつはテキパキと働くしっかり者のイメージしかない。
「で、デクに言われて...んな地味な格好しとんのか？」
「面接の時の採用条件がそれでしたから。理由をお聞きしても答えて下さらないんです。」
(デクの趣味っつうか、虫除けさせとんな。)
多分おそらく、奥手なデクがこいつを意図的に目立たない様に、悪い虫がつかない様にさせている。
(この見た目じゃ...男はほっとかねぇ...わ。)
じーっと...マジマジと見れば見る程良い女に見えてきて...俺はため息をついた。
「あの...何かご気分でも害されましたか？」
「...あ？」
「いえ、ため息を...つかれていたので。あ、お茶も出さずに申し訳ありません！」
ピョンと跳ねる様に立ち上がってキッチンへと向かう。
外見は良い女なのに、中身は何というか...。
黒猫が俺の顔を見上げ、大きな欠伸を一つ。
「てめぇの飼い主...大丈夫かよ？ちゃんと見ててやれや。」
「ニャー。」
「そうかよ。」
頭をわしわしと撫で、ククッと含み笑いをした。
「かっちゃん、その日は空けておく様にす「てめぇんとこの事務所、勅使河原っつうの居んだろ？」」
「な、何！？藪から棒「居んのかって聞いとんだ。」」
「う、うん。かっちゃんも会った事あるでしょ。それがどうかした？」
翌朝、ちょうどデクに電話する用があった俺は...確信を突いてみる。
「惚れとんのか？」
「はっ！？何言って「地味な格好させるっつう事は...そういう事じゃねぇんかよ？」」
「...そう...なのかな？...えっ、ええっ！何で知ってんの！？」
「そうなのかな？...じゃねぇわ！相変わらずハッキリしねぇクソナードだな、てめぇは！」
「なっ、何で君にそんな事言われなくちゃいけないのさ！一体何が言いたいんだよ！」
「うっせ...じゃ、切るわ。仕事の方頼んだからな！」
一方的に電話をぶち切り、出掛ける準備を始める。
(やっぱりか...。まぁ、デクが惚れとる女に用はねぇけどよ。)
身支度を整え、俺は人に会う為にファミレスへと向かった。
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作者名：梅シロップ | 作成日時：2018年2月3日 5時
