白衣９ ページ33
「俺は...今まで真剣に人を好きになった事がねぇ。いや...好きだ、とその時は思ってるんだが、ここまで悩んだ事は...初めてだ。あんたの身にもしもって考えたら堪んなくなって...ここに来ちまった。」
「わ、私は「最後まで話を聞いてくれ。上手く言えねぇけど...俺はAさんを守りてぇんだ。ずっと...つまり、俺はAさんの事を愛してる。側に居させて...くれねぇか。」」
Aさんは...明らかに動揺した顔をして、マグカップを両手で握り締めた。
「家にまで押し掛けてこんな話をして...悪ぃと思ってる。返事を...聞かせてほしい。」
「私...今まで...男の人にそんな事言われた事無くて...。」
「急かすもつもりは「轟さんはヒーローで...人気もあって...何故私なんですか？」」
「好きになっちまった...じゃダメか？去年現場で会った時から...好きだったんだ。」
体を前のめりにして話す俺を黙ってじっと見つめてくる。
マグカップをテーブルに置き、「お気持ちは嬉しいです。」とニッコリと笑った。
「ごめんなさい、お付き合いは...出来ません。」
「理由...聞かせてくれ。」
「家柄も違い過ぎますし...第一轟さんは私にはもったいない人...です。」
「俺の事が嫌なわけじゃ...ねぇんだな？」
Aさんは俯き、何も答えてくれない。
(これ以上聞くのは逆効果...か。)
そう思った俺は、この家に何故１人で住んでいるのかを聞いてみた。
「両親は相次いで病死で、妹は去年結婚して家を出ました。私は看護師資格しか無くて診療所は続けられないので、ここを売ってソマリアに行く資金に...したんですよ。」
天井を見上げて、寂しそうな声で話す。
「思い出は沢山ありますが、いつまでもしがみついていても仕方ないですし...前に進みたいと思ったんです。」
「Aさんは強ぇな。同じ年なのにすげぇと思う。」
マグカップに残るコーヒーを飲み干し、礼を言ってAさんの家を出た。
(振られた訳じゃ...ねぇよな？)
車に乗り込み、俺は爆豪に電話をかける。
「俺は恋愛相談室じゃねぇぞ、舐めプ！！」
「俺...ソマリアに行きてぇ。」
「ソマリア...だ？またややっこしい話かよ？」
邪魔をする許可を貰い、俺は爆豪の家に向かって車を走らせた。
俺は...何があってもAさんを守る...例え結ばれなくても守りたい。
これからは後悔しない様に、やりたい様に生きる。
親父が怒り狂う姿が脳裏に浮かび...「頭痛ぇ。」と独りごちた。
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作者名：梅シロップ | 作成日時：2018年2月3日 5時
