白衣４ ページ28
「ち、違うんです。ちょっと感極まって...しまって...。」
「何か感極まる事が...？」
「立派なヒーローにヒーローみたいだって言ってもらえて...とても光栄です。」
ゴシゴシと目を擦り、子供みたいな笑顔になる。
「そんなに嬉しかったのか？」
「...はい。私...恥ずかしい事に...無個性で生まれてしまって。ヒーローに憧れてもなれなくて、人の為に働きたいけど警察官は嫌で。それで医療の道につきました。」
「俺からすれば...そっちの方がすげぇと思う。」
俺は個性婚で生まれ...ヒーローになる為だけに育てられた。
親父からの厳しい圧力、母さんの苦しさ、悲しさ...。
自分の個性を恨み、親父を恨み...何度無個性だったらと思った事か。
「ただの勉強の虫です。知りたい、見たい、吸収したい。もう趣味の域かもしれません。」
「勉強...か。懐かしいな。」
「あー、今夜は...良い夢が見られそうです。」
しばらく歩くと家はこっちだと指を指し、丁寧に礼を言って駆け出して行く。
「また...また...飯誘っても良いか！？」
「はい、是非！おやすみなさい！」
Aさんが見えなくなるまで手を振り、姿が見えなくなると...今日の疲れが一気に押し寄せてきた。
(...眠ぃ。終電...もうねぇしな。)
欠伸をし、ぼーっとした頭である場所に向かって歩き出す。
(確か...あいつの家が...この近く。)
目的の家に着き、インターホンを鳴らすも応答無し。
明日は非番だと小耳に挟んでいた俺は...しつこくしつこく鳴らしてみた。
「うぅるっせぇぇ！何時だと思っとんだ！」
そうここは...爆豪が住むマンション。
ドアを開き、俺の顔を見ると無言で閉めようとする。
次の瞬間、ドアに足を挟み込み、俺は強引にそれを阻止した。
「っ、だぁぁぁ、帰れや！てめぇ何しに「眠ぃ、始発まで寝かせてくれ。」」
「あぁ？俺の家はてめぇのホテルじゃねぇ！」
「爆豪、叫ぶと近所迷惑になる。とりあえず...入らせろ。」
「てめぇの鳴らすインターホンの方が迷惑だわ！おら！さっさと入れや、くそが！」
スパァン！と頭をぶっ叩かれながらリビングに入り、そのままソファへと倒れ込む。
「こんな時間まで任務かよ！？」
「飯...食ってた。」
「はぁ？飯食って遅くなっただ？んで家に来て...くっそ迷惑な奴だな！？」
「痛ぇ...爆豪...蹴るな。」
足をガンガン蹴り飛ばされ、俺は仕方なくだるい体を起こして座り直した。
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作者名：梅シロップ | 作成日時：2018年2月3日 5時
