電車５ ページ17
「...今朝は混んでるね。」
「確かこの先の駅でヒーローのイベントがあるんだよ。僕も行きたいけど学校があるから行けないや。」
いつも通りの通学電車。
今朝はやたらと混んでいてすし詰め状態。
Aさんをドア側に寄せ、腕の間に入れて守っている。
「出久くん優しい。」
「そ、そうかな？Aさん小さいし、潰されちゃうでしょ？っ、A...さん？」
そっと僕の胸に手を当て、頬をつけてくっついてきた。
「電車降りるまで...こうしてて良い？」
Aさんから香る甘い匂いが鼻孔をくすぐり、僕は生唾を飲み込む。
可愛い彼女からそんな可愛い事を言われて、嫌だと言える男はいないと思う。
「また後でLINEするね！」
にこやかに電車を降りて行ったAさんに手を振り、大きなため息をついた。
(...心臓に悪いよ。)
最近やっと手をつなげる様になったばかりなのに刺激が強過ぎる。
その日の授業は全く頭に入って来ず、相澤先生に叱られ、散々な結果に終わった。
「オールマイト展すごい良かった〜。」
「うん、昔の写真とかいっぱい展示されてたし、貴重な物が沢山見れたね！」
日曜日、僕の街で催されていたオールマイト展に出掛けた帰り、手を繋いで歩いている。
Aさんの手は小さくて柔らかくて、いかにも女の子！という手。
「遅くなっちゃったね。家まで送ろうか？」
早く帰るつもりがついつい長居してしまい、外はもう薄暗い。
「駅までで大丈夫！最寄りからは自転車だから。」
後少しで駅に着くという時、Aさんが僕の腕を引っ張ってきた。
「ん？どうしたの？」
「耳貸して？」
言われた通りに耳を近付けると「好き。」という言葉と頬に柔らかい感触...。
「え...えっ！？」
「じゃ、じゃあね、出久くん！」
Aさんは振り向きもせず、一目散に駅に向かって走り出す。
(キ...キス...されちゃった！？)
感触の残る頬に手を当て、しばらく呆然と立ち尽くすしていた...。
(本当なら...僕が男なんだからリード...しないとな。でも...出来ないよなぁ。)
そんな事を考えながらも...僕とAさんの比較的健全な交際はこれからも延々と続いていく。
結局やっとキスに辿り着いたのは...それから１年後...の事でした。
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作者名：梅シロップ | 作成日時：2018年2月3日 5時
