短編集僕のヒーローアカデミア２ (ページ5)

今日:15 hit、昨日:3 hit、合計:43,948 hit

銭湯６ページ5

「おい、女湯と男湯の造りは反転しとんのか？」

「あ、うん！」

「んなら...この辺...か？受け取れ！」

声と共に何かが壁をひらりと超え、ポチャンと湯船に落ちる。

浮かぶそれを手に取って見ると缶ビール。

「...薪割りを手伝ったご褒美っつうんが缶ビールと風呂なんだわ。飲めんだろ？」

「あまり強くはないけど飲めるよ。」

「そうかよ。んなら...乾杯！」

両手を外に出し、ビールが湯船に入らない様にしてプルタブを開ける。

乱暴に扱ったせいで泡がプシュッと辺りに散らばり、流れ落ちた。

「美味しい〜。お風呂に入りながらのお酒は初めて！」

「まだあんぞ？」

「そんなに飲んだら確実に倒れるよ。」

「倒れちまったら...助けたるわ。んな壁、ヒョイっと超えられっからな。」

ペチペチと壁を叩く音が聞こえてきて、「超えて来ないで下さ〜い。」と叩き返す。

「Aは...彼氏いんのかよ？」

「勝己さんこそ、彼女いるんでしょ？」

「質問返しやめろや、ボケ。俺が聞いとんだ。」

「爆心地さんって、やっぱり勝己さんなんだ！」

テレビで「おら、死ねぇ！」とか「んだこら、ボケェ！」と叫んでるのを見た事あるな、と思い出し笑い。

「意味わかんねぇ事言うな。爆心地の前に爆豪勝己っつう大層な名前があるわ！」

「アハハ、苗字まで爆破系！」

「あ？てめぇもいかにも銭湯な苗字だろが！」

「確かにそうだ。でも女だから結婚したら名前変わるもん！」

今度は何を言い返してくるのかと待ってるのに...勝己さんの声が一向に聞こえてこない。

(あれ？出たのかな？酔っ払って...倒れた！？)

「勝己さん！爆心地さん、大丈夫ですか！！？」

「うっせ！生きとるわ！」

「静かになるから心配したよ！」

「考え事位...させろや。」

さっきまでと違う、思い悩んでいる様な...押し殺したような声。

「ごめんなさ「あー、くっそ暑ぃ。体流して出るか！」」

「う、うん！そうだね！」

(何か変な事言っちゃったのかな、私...？あ、彼女居るのか聞きそびれたな〜。)

そんな事を考えながら、少し熱めのシャワーを浴びた。

「だっせぇ、逆上せとんのか？」

「熱いシャワーを浴びたら気持ち悪くて...。」

居間で寝転び、団扇でパタパタと扇ぐ私の隣に座り込んだ。

「酒飲んで熱いシャワーって...アホかよ。」

「あっ！」

私の手から団扇を奪い取り、すごい勢いで扇いでくる。

勝己さんはゲラゲラと楽しそうに笑い、私は足を使って勢い良く飛び起きた。