短編集僕のヒーローアカデミア２ (ページ3)

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銭湯４ページ3

「...慣れてますね？」

「ずっと手伝ってっからな。」

「ずっと？ずっとって「もう２年位経つか？」」

タンクトップの裾を捲り、汗を拭って私の方を向いた。

綺麗に割れた腹筋が見え、思わずドキマギとしてしまう。

「にっ、２年も手伝って下さってたん...ですか？」

「手伝うっつうか、恩返しっつうか。」

「恩...返し...？」

「...おう。」

爆心地さんの話によると、初めて現場で人の死に触れた時、助けられなかった責務に苛まれてお酒に逃げたらしい。

家に帰る気にもなれず、雨が降り出して閉店した銭湯前で雨宿りをしていたら、お婆ちゃんに話しかけられたんだって。

「まぁ...大きい子犬だね。迷子かい？お入り、外は寒いでしょう。」

その優しい口調に縋るように中に入ると、お風呂に入れてくれた上に話まで聞いてくれた。

「婆さんに慰められて...やっと落ち着けたんだわ。婆さんが居なかったら...ヒーロー辞めてたかもしんねぇな。」

「辛い経験...なさってるんですね。」

「何度経験しても慣れねぇし、未だに婆さんに泣き言言いてぇ時もある...って、情けねぇ話しとんな、俺。」

フッと鼻で笑い、また薪を割り始めた姿を見ながら...ヒーローもやっぱり人間なんだなと...再認識する。

笑顔で人を助け、市民を守る為に身を呈して戦う姿ばかりを見ていると、無敵の様に思ってしまう。

(でもその裏では傷付き、悲しみ、落ち込む時も...あるんだ...な。)

そんな事をぼーっと考え、薪割りを続ける爆心地さんを見つめていた。

「勝己くん、お昼食べてくだろ？」

おじいちゃんは茶碗を手に裏へと出てきて、呑気な声で笑いかける。

「...爺さんのくそ不味い飯なんざいらねぇわ。」

「今日は不味くないけどな。Aが作るから。」

「えっ、私のご飯〜っ！？」

確かに作ってるけど、それはおじいちゃんと食べる為に作ってるだけで、他所様に食べていただける様な腕前では決して...無い。

素っ頓狂な声を出した私の顔を見て、「へぇ、んなら食うか。」と爆心地さんは笑った。

「お、美味しくないですって！」

「いや、Aの料理は美味「おじいちゃんは黙ってて！」」

しゅんと肩を落とした...おじいちゃん...。

「不味いかどうかは俺が決める事だろが。とりあえず食わせろ。」

上着を手に持ち、スタスタと家の中へ入って行く。

勝手知ったる人の家...という爆心地さんの雰囲気に唖然としつつ、今度は私が肩をがっくりと落とす...はめになった。