銭湯１８ ページ17
「皿は俺が洗うわ。あー、美味かった！」
冷蔵庫の有り合わせで作った中華丼をとても美味しそうに食べ、テーブルの上の食器をキッチンへ運ぶ。
適当に作った物でこんなに喜んでくれるんなら、今度は何を作ろうかと嬉しくなってしまう。
「何笑っとんだ？さっさと残りの食器、運んで来い。」
「あ、うん。ありがとう。」
「気にすんな。前からたまにしとったからな。」
手際良く食器を洗い上げ、満足そうに笑った。
「そろそろ帰っか。もう遅ぇ...んだよ？」
「っ、その...。」
もう少し一緒にいたい...そう思った私は勝己さんのシャツを咄嗟に握りしめる。
「んな事すっと...襲っちまうぞ？」
フワッと腕の中に包まれ、勝己さんの顔をじっと見つめた。
「か、勝己...さん...？」
「目ぇ閉じろや。」
私が目を閉じる前に唇を合わせてきて、そっと瞼を撫でられる。
きつく目を閉じ、勝己さんの広い背中に手を回した。
勝己さんの甘い香りと柔らかい唇に...全身の力が抜けていく。
「何つう目で...俺を見んだ？止まんなくなんだろが...。」
「止まらなくなるのは...ちょっと...困る。」
「心配すんな。がっついたりはしねぇ。」
わしゃわしゃと私の頭を撫で、大人の余裕を感じさせる様な笑顔。
「子供扱い...しないで。」
「経験...あんのかよ？」
「...無い...けど。勝己さんはあるんだと思うと...少し胸がざわつく。」
頭を撫でる勝己さんの手を掴み、猫の様に頬をすり寄せた。
「...拗ねんなや。これからはAだけなんだからよ。大事にしてぇんだわ。」
チュッとわざと音を立て、額にキスをされたその時...玄関の方からご機嫌なおじいちゃんの声が響いてくる。
「たぁだぁいまぁ〜！Aちゃ〜ん！」
慌てて勝己さんの傍から離れ、玄関のドアを開けた。
「うるさいよ！この酔っ払い！」
「あー、この大きい靴は勝己くんかなぁ？」
「相当酔っとんな、爺さん。邪魔してんぞ。」
ククッと苦笑いをし、面白そうに顔を顰める。
おじいちゃんは靴をポイッと投げ出し、勝己さんに「飲もう！」と威勢よく叫んだ。
「おじいちゃん！勝己さんは明日も仕事「ちょっと位なら支障ねぇよ。」」
「そう来なくっちゃな、勝己くん！」
ヨタヨタとした足取りでキッチンへ行き、日本酒の一升瓶とグラスを２つテーブルへ置く。
「...もう。」
嬉しそうにお酒を注ぐおじいちゃんを睨み付け、私は酒の肴を作ろうとキッチンに立った。
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作者名：梅シロップ | 作成日時：2018年3月25日 16時
