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予約の診療が終わった午後、担当を代わってもらって車を走らせて家に帰った。
車のエンジンを切ってすぐに中へ向かうと、中庭に繋がる窓の縁に背を預けている大我とそれをソファーに座って見守る慎太郎が居た。
『慎太郎。』
そう呼ぶと視線がこちらを見た。
『...空気が吸いたいって。』
『...そっか。』
そう言って俺は慎太郎の肩に手を置いた。
『後は俺が。』
『ん。』
そう言って慎太郎は立ち上がった。
そして背を向けて歩き出して俺は一旦部屋に向かい、ブランケットを手にしてから戻った。
『大我。』
そう呼んでブランケットを掛けてやると瞑っていた目がゆっくり開いた。
『...病院は??』
『お前を一人にするわけないだろ。それに俺、手伝いだし。』
『...ごめん。』
『だから気にするな。』
そう言って俺は大我の腕を摩った。
『寒くないか??』
『...大丈夫。』
そう言って大我は俺を見つめていた。
『どうかした??』
『..." 大我 " って、久しぶりに呼んだな。』
『呼ばれたくなかった??』
そう聞くと首を横に振った。
『...樹。』
『ん??』
『...苦しい。』
そう言われて俺が隣に移動すると肩に頭が寄せられ、手を伸ばして窓を閉めてから大我の肩に手を回した。
『部屋、戻るか??』
『...もう少しだけ。』
そう言って大我は胸に手を当てた。
『...厄介なヤツだな、俺って。』
『...。』
『...死にたくない。』
そう言われて胸が痛かったが、俺は手を大我の頭に移動させてポンポンとあやすように繰り返し叩いた。
『...死なせないから。』
『...ん。』
『...諦めんなよ??』
『...ん。』
そう言って大我が俺に身体を預けてきて、それを合図に俺は抱き上げた。
それから部屋に運んで色々と準備をして必要な処置を施した。
眠っている大我を部屋に残してリビングに向かうと、いつの間にか高地と北斗が帰ってきていた。
『京本は??』
姿を見た瞬間に北斗が立ち上がってそう聞いてきて、俺は空いてるところに座った。
『軽い発作はあったけど、とりあえず落ち着いた。』
『...そう。』
そう言って北斗はゆっくりと座った。
『北斗。』
そう呼ぶと俺の方を見て、手をポンポンと叩いた。
『大丈夫。』
『...樹。』
『あいつ、強いから。』
『...知ってる。』
『だろ??だから、信じてやろう??』
そう言うと北斗は頷き、俺は小さく息をついた。
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あい(プロフ) - コメント失礼します。泣けました。これからも頑張ってください!! (2019年1月13日 6時) (レス) id: 20d8e8453e (このIDを非表示/違反報告)
アリス - 素晴らしい作品をありがとうございます。更新楽しみにしてます。 (2019年1月1日 2時) (レス) id: fd962043f2 (このIDを非表示/違反報告)
とまと - とても面白くて読み応えあります!更新が楽しみです! (2018年11月29日 21時) (レス) id: 58ad9659bb (このIDを非表示/違反報告)
しお(プロフ) - とても素敵な作品で更新楽しみにしてます!応援しています! (2018年11月21日 23時) (レス) id: 46ec5817d4 (このIDを非表示/違反報告)
藤菜 - 大我大好き!この小説とても面白いですね!頑張ってください!応援してます! (2018年11月17日 4時) (レス) id: cd27931c78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:seri | 作成日時:2018年11月14日 10時