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学校が休みの日、俺はキッチンに立った。

仕事に行った樹に頼まれて、大我の為に作られた玉子がゆを温めるため。

倒れたあの日から一週間後、大我は周りに有無を言わせない雰囲気で退院を勝ち取ってきた。

その日からこうして誰かが必ず家に居るようなり、いつも以上に見張るようになった。

温めた玉子がゆを器に盛り、水を注いだコップとレンゲと共におぼんに乗せて部屋に向かった。

『大我。』

そう呼ぶとゆっくり目が開き、俺はサイドテーブルにおぼんを置いて側に座った。

起き上がった大我を支えるように体を寄せ、クッションを間に挟めてからゆっくりと体を寄り掛からせた。

『...ありがとう。』

そう言われて俺は器にレンゲを入れて手渡した。

ゆっくりと食事をする姿を見つめていると大我がこちらを見てクスッと笑った。

『...なんだよ。』

『いや。』

『...言えよ。』

そう言うと大我は優しく微笑んだ。

『...俺は恵まれてて幸せだなぁって思っただけ。』

『...なにそれ。』

『...ここ最近、常に側に誰かが居てくれて。一人じゃないんだなって思えて安心する。』

『...。』

『...慎太郎。』

『...なに??』

『俺はあの日、慎太郎に暴力を振るう親から助け出せたこと。すっげぇ誇りに思ってる。』

『...大我。』

『...親を頼って最善の方法を考えてもらって、お前を家族に迎えられたこと。自分を誉めてやりたい。』

『...。』

『...慎太郎の全てを守ろうって決めたあの時から、俺は生きることを一番に考えた。』

『...っ..。』

『守るために強くなろうと決めた。』

そう言った大我のあまりの真剣さに俺の胸は締め付けられ、目頭がすぐに熱くなり俯いた。

『...何だよ、それ。』

『...。』

『...何で、こんな状況で言うかな。』

『...慎太郎。』

『...ズルいわ、ほんと。』

少し震えた声を出してしまったことに情けなさを感じたが、それよりも涙が頬を伝ったことの方が俺にはよっぽど情けなくなった。

そんなことを思っているとカタッという物音がして、顔を上げようとするとぎゅっと抱きしめられた。

『...ありがとう。』

『...。』

『...幸せだなぁ。』

『...っ..。』

大我のその一言は静かな部屋の中では十分すぎるくらい響いて、俺の胸にはしっかりと突き刺さった。

『...兄ちゃん。』

『...ん??』

『...ずっと一緒にいてよ。』

そう言うと大我はぎゅっと更に抱きしめてくれて、俺はすがるように抱きついた。

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設定タグ:SixTONES , 京本大我 , 病系   
作品ジャンル:恋愛
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あい(プロフ) - コメント失礼します。泣けました。これからも頑張ってください!! (2019年1月13日 6時) (レス) id: 20d8e8453e (このIDを非表示/違反報告)
アリス - 素晴らしい作品をありがとうございます。更新楽しみにしてます。 (2019年1月1日 2時) (レス) id: fd962043f2 (このIDを非表示/違反報告)
とまと - とても面白くて読み応えあります!更新が楽しみです! (2018年11月29日 21時) (レス) id: 58ad9659bb (このIDを非表示/違反報告)
しお(プロフ) - とても素敵な作品で更新楽しみにしてます!応援しています! (2018年11月21日 23時) (レス) id: 46ec5817d4 (このIDを非表示/違反報告)
藤菜 - 大我大好き!この小説とても面白いですね!頑張ってください!応援してます! (2018年11月17日 4時) (レス) id: cd27931c78 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:seri | 作成日時:2018年11月14日 10時

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