。 ページ15
．
「――またそこに居たんですか」
「河村、さん」
「サンドイッチ、持って来たので一緒に食べましょう。お腹空きました」
いつも通り、背後に立ってフェンスの外側に居る私に、そっと話しかけてくれる河村さん。彼を見ていると、ふと、不安になるんだ。私の前から消えてしまった彼女のように、彼も、私を置いて消えてしまうのではないかと。
彼は右手に持っていたコンビニのロゴが入ったビニール袋を持ち上げると、私をお昼ご飯に誘ってくれた。彼がお昼をここで済ませるときは、この後なにも無いときだ。
前までは食べなくても生きていけるという私の言葉を聞いて自分の分しか持ってきていなかったが、いつしか私の分のお昼ご飯まで持ってきてくれるようになった。おにぎりだったり、お弁当だったり、今日のような、サンドイッチだったり。
どうやら彼は、あまり自炊はしないらしい。全くしないわけではないが、コンビニやスーパーに頼ることが多いと以前溢していた。
「……あの、今更かも、しれませんが、聞いても良いですか」
「僕に答えられることならばなんでも」
彼とベンチに移動する前に、聞いてみたかった。彼はあげていた腕を下ろすと、お腹空いたと言っていたのに、催促することなく私の言葉を待ってくれている。
「どうして、そこまでしてくださるんですか」
「ゲームだからです」
主語なんて無かった。けれど彼はまるで予想できていたかのように淡々とした口調で答えると、左手の中指で眼鏡を押し上げた。
そっか、と思った。分かっていた筈なのに、いざ彼の口からこれは�爛押璽爿瓩覆里世噺世錣譴襪函⊆笋靴い茲Δ福�悲しいような、よく分からない感情が心中を渦巻く。
なんて言ってほしかったのかは、分からない。彼になにを求めているのかも、自分がなにをしたいのかも。目的も自分の意思も、暗闇に放り込まれてしまったような、そんな感覚がした。
彼と出会ってから、よく自分の目的を忘れそうになってしまう。なんのために誰とも関係を持たずにここに入り浸るようになったのかも、何故毎度フェンスの外に出て彼を待っているのかも……死にたいと思った理由も。
「と、言うのも一つの理由ですが」
「え？」
ゲームだからですで完結したと思っていた言葉に続きがあると知って、素っ頓狂な声が思わず出てしまった。他に、一体何があるというのだろう。
→
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 333人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「QuizKnock」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
白菜(プロフ) - 歌さん» コメントありがとうございます！確かに今思うとぴったりですねw (2021年4月8日 13時) (
レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
歌 - この作品の後に『夜に駆ける』を聞いて号泣しました。最高でした！ (2020年9月7日 15時) (レス) id: 1444924b03 (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - 和奏さん» コメントありがとうございます。私もこの作品を書く際にはいろんな事を考えさせられました。その中で思ったのは、やはり人生は終わりがあるからこそ美しいんだろうなということです。顔も見えない奴ですが、最後の時まで和奏さんが笑顔でいれるよう、願っております。 (2020年8月14日 10時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
和奏(プロフ) - 私事になりますが、私は余命宣告を受けています。永遠があれば、と考えたことがありました。でも、白菜さんの小説を見て永遠なんて最悪だと思いましたね。大切な人の死は見たくない。白菜さんには毎回心を揺さぶられてます…今回も素敵な小説、ありがとうございました。 (2020年8月13日 10時) (レス) id: ea0b227b7d (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - はーちゃんさん» 書き始めた当初は終わりだけしか思い付いておらず、さてそこまでどうもって行くかにめちゃくちゃ頭を悩ませたんですが、そう言って頂けて嬉しいです。まさか後書きまで褒めて貰えるとは思ってませんでしたが(笑)こちらこそ有難いコメントありがとうございました！ (2020年6月12日 19時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
