第8話 ページ8
そのあとも色々見たり聞いたりしていると、
さっき叫んだ人が、西田有志選手であると分かった。
あの時は、ゲーム練習をしていたらしくサーブの流れ弾のようだった。
田中「どうかな、Aさん。面白いだろう?」
こっちでバボちゃんのサポートをしてくれる田中さんがそう言って笑った。
もう、弱いだなんて、言わせないよね
田中さんは悪ガキみたいに笑う。
私よりもずっと年上なのに、後輩みたいな感じ。
『そう、ですね。面白いです』
自分の頬はきっと緩み切っているんだろう。
手すりにもたれて、選手たちが片づけをしているコートに目をやった。
和気あいあいとしていて、チームの雰囲気もいい。
年齢とか関係なく高めあえる環境なんだな。
熱気みたいなものを胸に感じて、コートから目が離せなかった。
いつまでそうしていたのだろうか。
母さんに名前を呼ばれるまでの意識がない。
気付けば少し日が落ちかけていて、選手たちも誰もいなかった。
母「いつからそれしてたん?」
『分からへん……田中さんと話しよったら、目が、吸い込まれてん』
あのコートで、ボールを打ちたい。
今日一日でまたバレー熱が戻ってきそうなぐらい
選手たちに感化されていた。
母「あ、またその顔してる」
『?その顔って、何』
母「ちっちゃい頃からやで
なんかしたいこととか見つけたら、眉間にしわ寄せて。
でも口角がぐっと上がんねん」
言われるまで気づかなかった。
そんなことを話しながら階段を下りていると、母さんに袋を渡された。
『え、なんなんコレ』
母「んふ、何かって言われたらAの大事なもんやな」
『?なんのこと…』
そう言いながら袋を開けると、
暫く触ってなかったバレーボールと
誕生日に買ってもらったシューズだった。
母「バレー、したくなったんやろ?」
そう言って笑う母さんに
かなわないな、と思った。
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作者名:zyuma | 作者ホームページ:http://towa
作成日時:2023年11月24日 17時